国内

鉄道会社の「子育て支援車両」導入は少子化対策に奏功するか

東海道新幹線では繁忙期に親子連れ専用車両が運行されている

東海道新幹線では繁忙期に親子連れ専用車両が運行されている

 政府が掲げる「一億総活躍社会」実現のための三本の矢のひとつは「夢をつむぐ子育て支援」だ。しかし実際には、子連れへの風当たりが強い場面に出くわすことが多い。そのなかでも最たるもののひとつが、公共交通機関の利用ではないだろうか。未来の利用者のためにも利用しやすい運用を目指す鉄道会社の「子育て支援車両」などの試みについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 昨年の出生数が年間89万人となり、大きな波紋を呼んでいる。政府の試算より早く90万人を割り込み、政府や地方自治体は早急に少子化・人口減少に取り組まなければならなくなった。何らかの対策を講じて出生数を上げなければ、それは経済にも大きな影を落とす。いや、すでに経済的な影響はあちこちで出始めている。

 政府が少子化対策に本腰を入れるのは当然だ。企業も社会を形成するプレイヤーの一人であることを考慮すれば、少子化対策には企業も率先した取り組みが求められる。公的使命を色濃く帯びている鉄道会社にも、それらが求められる傾向は強い。

 今般、鉄道各社は高架下の空きスペースを公民館や図書館といった公共施設、駐輪場など幅広く市民が利用できる施設を整備している。そして、待機児童が社会問題化した近年は保育所スペースとして活用する動きも活発化していた。

 少子化対策は焦眉の急であり、それだけに鉄道各社は迅速に保育所の整備を進めてきた。鉄道会社が保育所開設に力を入れて待機児童の解消に努める動きは子育て中の親には心強い。しかし、まだ十分とは言い難い。

 鉄道利用の際に親がもっとも悩ましいと考えている問題が、不特定多数の人たちが乗り合わせる車内の過ごし方とされているからだ。

 電車に乗って移動する時間が、わずか10分に満たなくても親は神経質にならざるを得ない。とにかく、子供たちはじっとしてくれない。たった数分間でも騒いだり、走り回ったりする。どんなに厳しく躾をしても、叱りつけても言うことを聞いてくれない。それが子供だ。

 親にとって、乗り合わせた乗客に迷惑をかけないか気が気ではない。子供が原因で、乗り合わせた乗客とトラブルが発生することだってある。

 そうした親の不安を解消するべく、鉄道各社は鉄道の車内でも子連れの親が気兼ねしないような環境づくりを進めている。

「東京都交通局が運行している都営地下鉄大江戸線では、昨年7月に子育て応援車両と称するフリースペースを設けた電車の運行を開始いたしました。大江戸線は一編成8両で運行していますが、そのうち2両に子育て応援スペースを設けています」と話すのは東京都交通局電車部営業課の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン