政府が掲げる「一億総活躍社会」実現のための三本の矢のひとつは「夢をつむぐ子育て支援」だ。しかし実際には、子連れへの風当たりが強い場面に出くわすことが多い。そのなかでも最たるもののひとつが、公共交通機関の利用ではないだろうか。未来の利用者のためにも利用しやすい運用を目指す鉄道会社の「子育て支援車両」などの試みについて、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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昨年の出生数が年間89万人となり、大きな波紋を呼んでいる。政府の試算より早く90万人を割り込み、政府や地方自治体は早急に少子化・人口減少に取り組まなければならなくなった。何らかの対策を講じて出生数を上げなければ、それは経済にも大きな影を落とす。いや、すでに経済的な影響はあちこちで出始めている。
政府が少子化対策に本腰を入れるのは当然だ。企業も社会を形成するプレイヤーの一人であることを考慮すれば、少子化対策には企業も率先した取り組みが求められる。公的使命を色濃く帯びている鉄道会社にも、それらが求められる傾向は強い。
今般、鉄道各社は高架下の空きスペースを公民館や図書館といった公共施設、駐輪場など幅広く市民が利用できる施設を整備している。そして、待機児童が社会問題化した近年は保育所スペースとして活用する動きも活発化していた。
少子化対策は焦眉の急であり、それだけに鉄道各社は迅速に保育所の整備を進めてきた。鉄道会社が保育所開設に力を入れて待機児童の解消に努める動きは子育て中の親には心強い。しかし、まだ十分とは言い難い。
鉄道利用の際に親がもっとも悩ましいと考えている問題が、不特定多数の人たちが乗り合わせる車内の過ごし方とされているからだ。
電車に乗って移動する時間が、わずか10分に満たなくても親は神経質にならざるを得ない。とにかく、子供たちはじっとしてくれない。たった数分間でも騒いだり、走り回ったりする。どんなに厳しく躾をしても、叱りつけても言うことを聞いてくれない。それが子供だ。
親にとって、乗り合わせた乗客に迷惑をかけないか気が気ではない。子供が原因で、乗り合わせた乗客とトラブルが発生することだってある。
そうした親の不安を解消するべく、鉄道各社は鉄道の車内でも子連れの親が気兼ねしないような環境づくりを進めている。
「東京都交通局が運行している都営地下鉄大江戸線では、昨年7月に子育て応援車両と称するフリースペースを設けた電車の運行を開始いたしました。大江戸線は一編成8両で運行していますが、そのうち2両に子育て応援スペースを設けています」と話すのは東京都交通局電車部営業課の担当者だ。