東京五輪開幕まで半年を切ったいま、せっかく観戦チケットが当たったのに東京遠征時の宿泊場所がいまだに確保できていない人や、仮に空いていても、破格な料金を提示するホテルや民泊に怒りがこみ上げている人も多いだろう。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、大規模イベント時や繁忙期における料金変動の“妥当性”についてレポートする。
* * *
東京五輪のホテル事情が何だか騒がしい。発端は昨年6月のチケット抽選後、当選したがホテル予約がまったく出来ないという問題の表面化であった。当時、まだ1年以上前というのに会場周辺のめぼしいホテルはほぼ「×」、会場に隣接するエリアも空きがないという状況だった。
原因のひとつは大会組織委員会による関係者のための仮押さえだったが、都心の周辺ホテルでは早速一部高騰の動きがあった。通常1万円程度のビジネスホテルが6万円に跳ね上がるなど、なり振り構わぬ値付けがニュースを賑わした。ただ、実際にはまだ予約を開始していないホテルは多く、オリンピックへ向けて新規開業する施設もあるので落ち着いた情報収集を──と筆者は各種メディアから発信した。
ところが年末から年始にかけて再び料金高騰に関する新たな話題が持ち上がった。
きっかけは在京キー局のニュース番組からの「一部民泊が信じられないほど高騰している」という連絡で、番組にて解説してほしいとのオファーだった。早速会場周辺でリサーチしてみると、通常1~3万円ほどの民泊が10万円以上はザラ、30万円や50万円、中には90万円というケースまであった。
取材してみると1施設で6人宿泊できる施設があるなど条件は様々であったが、いずれにせよ尋常ではない料金設定を散見した。運営者によると実際に問い合わせもあるというが、このような高額で売れる確信はなく「とりあえず反応をみてみたい」というオーナーの声もあった。「もし売れたらかなりラッキー」と目を輝かせる。
ホテルの料金が変動するのはいまや常識である。基本的に繁忙期には高くなり閑散期には安くなる。また、イベントやコンサートなど人が集まることでホテル需要が喚起され高額になるというのも珍しくない。とはいえ、そうした状況に乗じて一般のホテルや旅館が通常料金の30倍や50倍などになるという非常識な料金設定は基本的にみられない。