2020年4月から75歳以上を対象に、従来の健康診断に加えて「フレイル健診」が義務化される。フレイルとは「衰弱」を意味する言葉だが、一般にはまだ馴染みが薄い概念だ。しかし、フレイルを放置すると死亡率や認知症の発症リスクを増加させるなど、怖ろしい事態を引き起こす可能性がある。
フレイルには、筋肉量の減少による「身体的フレイル」や、認知症やうつ病の発症リスクを高める「精神的フレイル」、独り暮らしで貧困や孤立に陥る「社会的フレイル」の3つの側面に分類される。
では、フレイル健診ではどんなことを聞かれるのか。桜美林大老年学総合研究所所長の鈴木隆雄教授が説明する。
「例えば『半年以内に2~3kgの体重減少はあるか?』という質問があります。筋肉量が減少していないか、そもそも食事量が減っていないか、などの身体的フレイルの前兆を判定します。
他には『半年前に比べ、たくあん・さきいかなどの固いものが食べにくくなったか?』の質問があります。これは顎の筋肉や、飲み込む力の衰え(嚥下障害)がないかを判定します。オーラルフレイルの早期発見に役立ち、誤嚥性肺炎の予防になります」
ただし、フレイル健診には課題も多いという。東京都健康長寿医療センター研究所の研究部長・北村明彦氏が語る。
「15項目の問診を受けたとしても、担当医がフレイルに詳しくない場合、“形式的に問診しただけで結果が活かされない”可能性が残ります。15項目の問診結果は、ポイント制など客観的な判断基準も定められていない」