さらに11月にはアメリカ大統領選挙がある。もしトランプ大統領が再選されたら、もうアデルソン会長に気を遣う必要はなくなるので、トランプ大統領は安倍首相にカジノ誘致推進のプレッシャーをかけなくなるだろう。逆に、トランプ大統領が落選した場合も、安倍首相はトランプ大統領との約束を守る必要がなくなるので、やはりカジノ誘致は不要となる。
つまり、どのみち今秋には安倍首相にとってカジノ誘致を推進する理由がなくなるわけだ。
しかも、共同通信社が1月に実施した全国電話世論調査によると、秋元容疑者の汚職事件を受けて、70.6%がIR整備を「見直すべきだ」と回答している。「このまま進めてよい」は21.2%にすぎなかった。カジノ誘致には国中で激しい逆風が吹いている。
こうした状況を鑑みると、結局、現在のカジノ狂騒曲は、かつて日本各地が名乗りを挙げた“首都移転狂騒曲”と同じように、これから沙汰止みへと向かうと思うのである。
●おおまえ・けんいち/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『経済を読む力「2020年代」を生き抜く新常識』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年2月14日号