NHK大河ドラマ『麒麟がくる』で注目度が高まっている女優の1人が門脇麦だ。彼女が活躍しているのは、この大河だけではなかった。コラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが“女優・門脇麦”について解説する。
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大河ドラマ『麒麟がくる』には、今のところ、ふたりのヒロインがいる。一人はいろんな意味で注目を集めた斎藤道三(本木雅弘)の娘・帰蝶(川口春奈)。もう一人は駒(門脇麦)である。
駒は、初めて京に出た明智光秀(長谷川博己)が、叔父の主君・斉藤道三の妻・小見の方の病を治せる名医を探すうちに出会った望月東庵(堺正章)の助手。第一話で光秀に自分が戦災孤児だと打ち明けた駒は、心から戦を憎み、「麒麟というのは穏やかな国にやってくる不思議な生き物だよ。それを呼べる人が必ず現れる。その人は麒麟を連れてくる」と目をキラキラさせて語る。その言葉を聞いた光秀は、「麒麟のくる国を目指す」と誓うのだ。
…ということは、この物語のすべてのカギは、駒がもたらしたものじゃありませんか! 出演者クレジットで「明智十兵衛光秀」の次に堂々と「駒」の名前が出てくるのも納得だ。
そんな超重要人物の駒は、毎回、よく働くのである。光秀らが織田軍と戦って、辛くも勝利すると、傷ついた人々を直ちに看護。やっと落ち着いたと思ったら、帰蝶が木登りをしてリスをつかまえたときに小枝で足を切った、なんてことを言ってきたので、さっそく手当て。戦国の白衣の天使か保健室の先生か。さらに、幼いころ教えられた歌を、光秀の母(石川さゆり)の前で歌い始める。小松菜奈とのデュオ『さよならくちびる』などで知られる歌い手でもあるとはいえ、門脇麦もベテラン歌姫・石川さゆりの前でアカペラで歌うんだから、さぞかし緊張したことだろう。