カラーコーディネーターの資格を生かし、彩色一筋だった幸恵さん(写真/共同通信社)

「私がわからないのは、報道する意義です。それについて取材者に問うと、『二度と同様の事件が起きないようにするために事実を報道する』と言うかたもいます。でも、それが何の役に立つの? 教訓になるの? 今回の事件を報じて何か抑止になるの? 抑止するなら犯人側のことを報じればいいんじゃないの? そう思います。

 取材に来られたかたたちはそれぞれ、事件報道への信念や思いを話してくれました。そういう姿勢で取材をされているということは理解できましたが、私が納得できる答えはありませんでした」

 大きな事件・事故が起こった直後、被害者や遺族が直面させられるのがメディアスクラムだ。

「事件当日、私は自宅にいました。10時半頃に事件が起きて、テレビで報じ始めたのが昼前後やったかな。それからは幸恵の携帯電話にかけたり会社に問い合わせたり、落ち着かないまま過ごして」

──当日、現場に向かわれましたか?

「行ってくれたのは幸恵の妹です。京アニの本社に行くと、同じように駆けつけたご家族が何組かいたそうです。

 なんでもいいから事情を聞きたいとみな必死やった。何もわからないから現場に来てるのに、本社の外に出ると、堰を切ったように報道陣にワッと取り囲まれて質問攻め。タレントのゴシップを扱うのと同じようにライトで照らされ、マイクを突き出されて…たいへんやったそうです。

 もっとね、不正を質すとか、最近であれば『桜を見る会』の疑問を問うためにやるならわかりますけど、取材のかたがたは政治家には腰が引けてるようにしか見えない一方で、事件の被害者にそんなことをするのかと。

 その翌日、私が行った時も2組ほどご家族がいらっしゃいましたが、泣き崩れていました。心配や不安の極限にいる人たちに、まだ何もわかってないのに『今の気持ちは?』って聞かれても、心配で心配で仕方ないだけ。わかりきってるでしょう。そういうのは避けてほしいなと思いました」

──津田さんが現地に向かわれたのは?

「事件翌日、DNA鑑定のため、肉親のDNAを採取する必要があるという連絡を受けて、京都に向かいました。そして、第2スタジオに立ち寄った際に初めてテレビ局(NHK)の取材を受けたんです。

 そして、『改めて取材をしたい』と、次の日の昼間に自宅に来られた。外がまっ暗になった頃にやっと取材が終わって、ホッとしていたらインターホンが鳴ったんです。

 玄関を開けると今度は、カメラを手にした別のテレビ局の男性が1人で来ていました。『NHKに出てたから、うちの局でも“顔出し”をしてほしい』って言うんです。顔出しは断りましたが、話を始めた時に、また別のテレビ局のカメラマンが1人でやって来ました。2人とも肩に担ぐような大きなカメラで…あれやね、あの大きなカメラいうのは威圧感があるね。何を聞かれたかほとんど覚えてもないけど、疲れたことしか覚えてないわ」

──その日から毎日?

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