M-1新王者ミルクボーイの登場で昨年大ブレイクした霜降り明星が危機感を抱くほど、競争が激しい今のお笑い界。そんななか、広く誰からも愛され続ける芸人も存在する。「欧米か!」で一世を風靡してから10数年。一発ネタで持て囃されながら気づけば表舞台から姿を消していく芸人がいる一方で、タカアンドトシは確固たる地位を築き続けている。
『帰れマンデー見っけ隊!!』(テレビ朝日系)をはじめ複数の冠番組を持つほか、レギュラー出演を果たしている番組も数多い。昨年は結成25周年を迎え、13年ぶりとなる全国ツアー「タカアンドトシ日本全国漫才行脚 ~この漫才が目に入らぬか!?~」を敢行した。タカアンドトシはなぜ、ファンを魅了し続けているのだろうか。
1994年に結成し、翌年に札幌吉本の一期生としてプロデビュー。「全国吉本若手漫才」で優勝するほか、ローカルの深夜番組でコントを披露していた。その後東京へと拠点を移すと、2004年の「M-1グランプリ」で4位にランクイン。そして翌2005年、若手芸人の登竜門だった「爆笑オンエアバトル」でチャンピオンを獲得する。続く2006年もチャンピオンの座を手中に収め、破竹の勢いで全国にその名を轟かせた。
同2006年には初の冠番組となるラジオ『火曜JUNK2 タカアンドトシのケチャケチャラジオ』(TBS)の放送も開始。一気にブレイクしたように見えるが、その華々しい功績はあくまでも漫才師としての群を抜いた技術力の高さに支えられていた。タカアンドトシの漫才を“革新的”と高く評価するお笑い評論家・ラリー遠田氏が解説する。
「一般に、関西以外の漫才師は“言葉の響きが気持ちいい漫才”を作るのが難しいと言われています。関西弁はもともと漫才向きのリズムのいい言葉だからです。タカアンドトシの『欧米か』の漫才が画期的だったのは、それが関西弁ではない“言葉の響きが気持ちいい漫才”だったからです。
一定のリズムで繰り出される『欧米か』というキレのいいツッコミフレーズがかもし出すグルーヴ感こそが革新的なものだったのです。これに代表されるように、彼らの漫才師としての技術は群を抜いています。言葉の響きがいいから安心してずっと見ていられるのです」