多数のお笑い芸人が特殊詐欺グループの会合に出席し金銭を得ていた、いわゆる”闇営業問題”が2019年6月に発覚したのち、謹慎していた当事者たちの復帰が続いている。もっとも注目されていた一人、雨上がり決死隊の宮迫博之がYouTuberデビューという形で活動再開した。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、初回で「(コンビの相方)蛍原の隣に戻りたい」と語った宮迫の願いに近づけているのか考えた
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1月29日、謹慎中だった雨上がり決死隊の宮迫博之がYouTuberデビューを果たした。当然のことだが、宮迫は事件発覚以前と変わりない芸能生活への復帰を望んでいる。YouTuberとしての活動も一度失った好感度を取り戻す工作の一つだろう。しかし、現在に至る宮迫の動きを観ていると、どうもうまくいっていない。
1本目の動画からつまずいていた。反省と相方・蛍原徹と再びお笑いをやりたい!といった想いが述べられた前半部分は良かった。差し障りのない内容である。しかし、最後に語ったYouTuberデビューの決意が悪かった。
「皆さんに”恩返し”出来る事を何なのかって考えた時、YouTubeに出会いました」と宮迫。
宮迫は視聴者へ恩を返すためにYouTuberデビューを決めたらしい。動画内で自身の表現欲について語ってもいたが、最初に出たのが「恩返し」というフレーズである。自身の復帰したいと言う気持ちは二の次で、あくまでも「皆さんのために戻ってきましたよ」ってな感じなのである。その恩着せがましい態度に辟易としてしまった。変に自意識が過剰なのだ。
翌日、宮迫はコラボ動画(チャンネルを持つYouTuberどうしでお互いの動画に出演し合うこと)を配信した。相手は炎上系YouTuberのヒカルだった。その2日後にはこれまたトラブルを起こすことで知られるレペゼン地球のDJ社長とコラボ。キングコングのカジサック同様、YouTubeに骨を埋める覚悟があるならば理解できる。しかし、宮迫の野望はテレビの世界に再び返り咲き、「蛍原の隣に戻る」こと。宮迫がYouTubeで行うべきは、一度汚れてしまったイメージを払拭することだ。しかし、最初から話題性を求め評価が極端に分かれるYouTuberとコラボをしてしまった。一瞬、多くの人の目を引き寄せることはできるが、長期的に考えると得策とは言えない行動である。
ヒカル、DJ社長からすれば一流芸能人と関われたメリットは大きい。自身の価値が向上する。しかし、宮迫サイドからすれば、テレビの世界で積み重ねてきたタレント性を目減りさせる行為である。また今後、ヒカル、DJ社長が活動を続けていくなかで炎上どころではないトラブルを起こさない保証はない。彼らが事件を起こせば、コラボした宮迫にも火の粉は飛ぶ。今後、テレビ業界は「ちゃんとしている人である」といったイメージが更に重要となっていくだろう。ゆえに、危険因子を持つタレントはスタッフとしても使いづらいはずだ。