2018年3月2日、東京・目黒区で船戸結愛ちゃん(当時5才)が虐待の末に死亡し、母・優里(27才)は保護責任者遺棄致死罪に問われた。結愛ちゃんを直接暴行したのは夫・雄大だが、優里が「結果的に容認した罪は重い」と裁判官は判断。夫のDVで正常な判断能力が失われていたことは考慮された上で、実刑8年の判決が下された。
2月7日、優里自ら事件について綴った一冊『結愛へ 目黒区虐待死事件 母の獄中手記』が出版された。そこには獄中で罪や現実と向き合おうとするたびに懊悩する姿が、淡々と描かれている(以下《》内は手記からの引用)。
◆生死どちらを選んでも間違っている
獄中で優里は何度も自殺未遂を繰り返した。もう一歩で踏みとどまってしまう自分に呆れた。愛娘の死を止められなかった、なのに自分の身だけはどうして守ろうとするのか――救いのない懺悔の日々が続いていた。
深い闇にいた彼女に、一つの出会いがあった。その女性弁護士は優里に会うなり、「若いお母さんだね~」と口に出した。当初はたわいない話しかしなかったが、優里の心のこわばりが徐々にとけていった。2018年9月、弁護士はカウンセラーを伴って接見にやってきた。
《DVの専門家だという。
弁護士以外の普通の接見は、この人が初めてだ。誰にも会いたくなかった。親にもこないでと言ってあったから。(略)
毎日説教されたと言ったら、それも心理的虐待だと言ってくれた。結愛に暴力を振るうことも私へのDVだって言っていた。香川では、体にアザができていないとDVじゃないと言われた。
自分がおかしくなっているという自覚があったので、香川の医療センターでは精神科医を紹介してもらった。でも問題ないと言われた。こんな風に話を聞いてくれる人は香川ではいなかった》