国内

羊肉ブーム過熱 サイゼリヤでは売れ過ぎによる販売休止まで

「サイゼリヤ」のメニューより

 第三次羊肉ブームが到来しているという。外食チェーン「サイゼリヤ」では、羊肉を使った新メニューが開始早々、売れ過ぎにより販売一時休止となった。各国料理の歴史に詳しく、幼少期から羊肉好きだったという歴史作家の島崎晋氏がブームの背景を紐解く。

 * * *
 コスパの良さで若者を中心に人気を集める外食チェーン「サイゼリヤ」。今年1月20日、そのサイゼリヤが昨年12月に始めた新メニュー「アロスティチーニ」が予想を上回る人気から原料不足に陥り、販売を一時休止したというニュースが流れた(現在は神奈川など一部地域で数量限定・期間限定で提供中)。

 アロスティチーニはイタリア中部・アブルッツォ州の名物料理で、数センチ角にカットしたラム肉の串焼きのこと。現地では町中で日本の焼き鳥のように焼かれ、塩だけをかけて食されるが、サイゼリヤでは独自の混合スパイスを添えて、2串399円(税込み)で提供。これが若者を中心に爆発的な人気を呼んだのである。

 現在、日本には第三次羊肉ブームが到来している。成長した羊のマトンではなく、仔羊のラム肉がメインである。

 第一次ブームは、羊毛の国産化を企図した「緬羊百万頭計画」に付随して始まった。同計画は大正時代に始まり、国策として北海道を中心に何か所もの牧羊場が設けられた。羊毛の国産化が放棄されたのちは羊の食用への転換が促され、試行錯誤の末、もっとも美味しい食べ方が終戦後にジンギスカン料理の名で一般にも知られるようになった。

 発祥の地については諸説あるが、調理法と食べ方はほぼ同じ。半球状の専用鍋で、もやしやタマネギ、ニンジンなどの野菜とともに焼いて食べるのだが、このとき欠かせないのが肉の臭みやクセを和らげてくれるリンゴ入りのタレ。あらかじめ肉をタレに漬けておく味付けと、焼いた後にタレを使う後付けの2パターンがあった。一時は鯨肉と並ぶ人気を誇ったが、海産物や他の食肉との競争に敗れ、牧場のある地域以外ではしだいに縁遠いものと化していった。

 第二次ブームが到来したのは、米国産牛肉の輸入が停止されるなど狂牛病(BSE)問題で揺れるとともに、健康志向の高まった2004~2006年頃のこと。食べ方は第一次ブームのときと同じくジンギスカンがメインだったが、マトンよりも柔らかく臭みやクセが少ないラム肉が主役だった。BSE騒動が沈静化し安価な牛肉の輸入が再開されると、不慣れな店が劣化した羊肉を提供する例が多かったこともあり、「羊肉は臭くて硬い」という負のイメージを残してブームは去った。

 そして現在の第三次ブームは5~6年前からじわじわと盛り上がってきたもの。低カロリーなうえに、加工技術、冷凍・冷蔵(チルド)技術の著しい進歩により、日本でも臭みがなく柔らかい羊肉が入手しやすくなったことが大きい。ジンギスカンやしゃぶしゃぶに限らず、羊のいろいろな部位を様々な調理法で提供する羊肉専門店が急増中である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト