東京五輪開会式直前の7月5日、「五輪の顔」を決める東京都知事選が実施される。前回のリオデジャネイロ五輪は、開催3か月前にブラジルで政変が起きて初の女性大統領だったルセフ大統領が失脚し、臨時の大統領代行が開会宣言するという異常事態の中で行なわれた。
この国でも、安倍晋三首相と“五輪のドン”森喜朗・組織委員会会長のラインが“仇敵”である小池百合子・都知事に対立候補を立てて“小池下ろし”を狙っている──。
「首相官邸と森会長をはじめとする自民党の五輪族議員、東京都連はなんとしても五輪前に小池の首をすげ替えたい。小池に近い二階(俊博)幹事長が仕切る党本部は当てにならないから、いまは都連が中心になって対立候補の絞り込みを急いでいる」(都連幹部)
小池氏の任期は7月30日までで、五輪の開会式(24日)は小池都知事の下で開催される。だが、都知事選で自民党の新知事が誕生すれば、開会式に新旧知事が出席して“五輪の主役交代”を印象づけられるし、閉会式(8月9日)で五輪旗を次の開催地のパリ市長に手渡すのは新知事の役目となる。
とはいえ、自民党側の狙いは「小池に五輪旗を持たせたくない」という意地や面子だけではない。裏にあるのは東京五輪の「遺産」ともいえる剰余金の配分をめぐる主導権争いだ。
過去の五輪を見ると、リオ五輪こそ財政難で赤字だったものの、ロンドン五輪(2012年)は約46億円の黒字、北京五輪(2008年)は約140億円の黒字、韓国の平昌冬季五輪(2018年)も約62億円の黒字を出している。
東京五輪は少なくとも100億円以上の剰余金が出ると見込まれており、その剰余金の“受け皿”として、ひそかに森氏を最高顧問、遠藤利明・元五輪相を理事長とする「財団法人日本スポーツレガシー・コミッション」(レガシー財団)の設立準備が進められている。