「ロマンポルノは監督やスタッフ、俳優、女優をはじめ多彩な人材を輩出し、映画文化の歴史を作ってきました。それまで無名だった人物がロマンポルノをきっかけに有名になっていった例は数え切れません」
そう語るのは映画評論家/映画プロデューサーの寺脇研氏だ。石原裕次郎や吉永小百合ら銀幕の大スターが活躍する大手映画会社だった日活は、1960年代半ばから経営不振に陥り業績が低迷。その打開策としてポルノ映画の製作へと踏み切り、1971年に日活ロマンポルノがスタートした。多くの監督が日活を辞める一方で、藤田敏八、神代辰巳など若く新しい才能が登場した。
「彼らは他の監督が忌避するポルノというジャンルの中で、それでも映画を撮りたいという情熱を持っていました」と寺脇氏は言う。
彼らはポルノ映画というフォーマットに則りながら、脚本や演出では自由な表現を試みることで、単なる煽情的な映画には留まらない高い評価を獲得していった。
若き才能の登場は、俳優たちの世界でも同じだった。
「舞台を主戦場にしていた多くの無名俳優が、ロマンポルノを通じて世の中に出ていきました。その意味でロマンポルノは、若手俳優の登竜門だったと言えるでしょう」