現役時代はプロ野球の南海などで捕手として活躍し、1965年に戦後初の三冠王を獲得した野村克也氏が2月11日、84歳で亡くなった。現役引退後はヤクルト、阪神、楽天などの監督を歴任し、数々の名選手を育てた。本誌・週刊ポストの最後のインタビューとなったのは昨年末。“野村チルドレン”である監督たちが、2020年のペナントを戦うことについての思いを聞く取材だった(2020年1月17・24日号掲載)。
今季の12球団の指揮官を見渡すと、新たに監督に就任したヤクルトの高津臣吾氏、楽天の三木肇氏、2年目となる阪神の矢野燿大氏、2年連続リーグ優勝を果たした西武の辻発彦氏、そして1年だけだが監督と選手の関係だった日本ハムの栗山英樹氏、中日の与田剛氏も含めると、6球団の監督が野村チルドレンとなった。夏には侍ジャパンの稲葉篤紀氏も東京五輪で采配を振るう。彼らに対して、野村氏はこうメッセージを送っていた。
「この世界は結果。結果よければすべてよし。結果を出せば出しただけ評価は高くなるが、負ければ“野村のモノマネ”と批判されるだろう。ただ、勝つことが名将の条件ではない。結果を出すまでのプロセスが問題。信は万物の元をなすというが、選手やコーチからどれだけ信頼されているか。それが名将の唯一の条件じゃないかと私は考えている」
ヤクルト時代は監督としてチームを4度のリーグ優勝4回、3度の日本一に導いた野村氏は、「監督論」をこう続けた。
「監督が代わればチームは変わる。フロントがチームを変えてほしいから監督を代えるのだから当然の話。企業でもトップに信頼・信用がないと歯車がうまく回らない。それと同じで選手がいかに監督を信頼・信用しているか。一度できた信頼関係はなかなか崩れないもの。ドラフトやトレード、FAでいい選手をかき集めるのも、間違いではないが、絶対ではない。チームを強くするには、監督が選手より一歩も二歩も前を歩いている。それがリーダーの真の姿です」
そして最後に、監督となった教え子たちに、こうエールを送るのだった。