米ハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、米司法省は1月下旬、教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追していたことが分かった。米紙『ニューヨーク・タイムズ』によると、米捜査当局はこれまで米国の71機関で、中国当局によって180件もの米国の知的財産権が盗用された疑いがあるとして捜査を行っているという。
この教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー学部長で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている化学者とされる。
リーバー氏は2008年にノーベル化学賞候補と取り上げられたほか、ロイター通信は2010年に教授を「世界をリードする化学者」として報道。国際的に権威ある科学誌に400以上の論文を発表、ロバート・A・ウェルチ化学賞など多数の賞を受賞しているのに加え、50を超える米国の特許を保有している。
リーバー氏に目を付けたのが中国だ。海外の優れた研究者に資金的な支援を行い、中国の研究水準を高め、研究成果を中国経済の発展などのために活かすという「1000人計画」を主導している中国共産党中央組織部が同氏に計画への参入を呼び掛けた。
米司法省によると、リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011~2016年までの雇用契約を結ぶとともに、2012~2017年まで1000人計画にも参加。この5年間で、教授は毎月5万ドル(約540万円)の給料と年間15万ドル(約1620万円)の生活費を支給されていた。1年間で計約8100万円となる。