五輪の記憶は、今でも当時の興奮を呼び起こす。同世代と話せば、「金メダルに涙した」「あの速さは異次元だった」と話は尽きない。、女性アスリートの「美しい思い出」も盛り上がる話題だろう。
みんなが心を奪われた五輪ヒロインの歴史を振り返る。
「ゴールした直後に恋人に駆け寄ってキス……まるで洗練された映画のワンシーンのようだった。華奢で儚げな顔をした美人だったなぁ」
1964年東京五輪で市川崑監督のもと記録映画の助手を務めた映画監督・山本晋也氏が、今も鮮明に覚えていると語るのは、陸上女子800メートルで金メダルを獲得したイギリスのアン・パッカーだ。
「当時の私は女子スポーツ選手に美的なものを求める感覚がまだなかった。だからこそ彼女の女性的な魅力と美しさは衝撃的だった」(山本氏)
サッカー日本代表として東京五輪に出場した釜本邦茂氏が振り返る。
「忘れられないのは“体操の名花”と言われたチェコの体操選手ベラ・チャスラフスカです。選手村の食堂で本人を見かけた時は、あまりの美しさにしばらく口をポカンと開けたままだった。僕は20歳、彼女は22歳だったけど、大人びていて色気があって、彼女の周辺だけが光り輝いていた」
チャスラフスカは跳馬、平均台、個人総合の3種目で金メダルを獲得した。