◆難易度を上げて受験生を迷わせる設問とは
それでは、出題者が問題の難易度を上げようとしたらどうすればよいか。基本的には、選択肢の数を増やせばよい。しかし、ただ増やすだけではなく、あわせて正確な知識を持っていない受験者に迷いを生じさせるやり方もある。
たとえば【問題1】の場合、「(a)~(c)の中には春の星座はない」という新たな選択肢(d)を追加する。この選択肢は、正確な知識のない受験者にはとても悩ましい。
元の問題では、もし(a)が春の星座だと知らなくても、(b)と(c)が春の星座ではないとわかれば、消去法で(a)が正解と判断できる。しかし、(d)の選択肢が加わると、この手は使えない。当てずっぽうでは、25%の正解確率となる。
【問題2】の場合、冬の星座として「(d)こいぬ座」という選択肢を追加する。こうすることで、回答の種類は、4の階乗の24通りとなる。選択肢を1つ増やしただけで、当てずっぽうの正解確率は17%から4%に急激に下がる。問題の難易度を上げるには効果的な方法といえる。
【問題3】の場合、選択肢を1つ増やすと、回答の種類は、2の4乗から1を引いて、15通りとなる。もちろんこれで難易度は上がる(当てずっぽうの正解確率は14%から7%に半減)のだが、これとは別のやり方もある。
問題文に、つぎの一文を加えるのだ。「ただし、(a)~(c)のいずれも春の星座でない場合は、『なし』と答えなさい」
このただし書きは、「選択肢のいずれも春の星座ではないかもしれない」と、受験者に揺さぶりをかけている。受験者としては、“わざわざただし書きをするくらいだから、『なし』が正解の可能性も捨てきれないのでは?”と考えることになるだろう。
回答の種類は、1つ増えて8種類となり、当てずっぽうの場合は、13%の正解確率となる。しかし、このただし書きには、それ以上に、心理的な内容が含まれている。ただし書きの裏に、「簡単には正解させないぞ」という出題者の冷酷さが垣間見えるからだ。