東京五輪の日本代表内定に向けた選考レースが佳境を迎えている。新進気鋭の選手も、前回五輪の王者も関係ない。限られた枠を巡る苛烈な争いを、ノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。
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金メダルが狙える競技は総じて国内の代表争いも厳しい。日本のお家芸・柔道では現状、内定者は女子78kg超級の素根輝(そねあきら・環太平洋大1年)のみ。ロンドン五輪100kg級代表だった天理大監督・穴井隆将氏は語る。
「前回のリオで金メダルを獲得した90kg級のベイカー茉秋(JRA)は出場が厳しくなっている。4年という時間はアスリートにとって長く、東京五輪では女子と合わせた全14階級の大半が初出場の選手となるでしょう」
最終選考会は4月の全日本選抜体重別選手権。しかし2月のパリとデュッセルドルフでのグランドスラム2大会の結果次第で内定者が出る可能性もある。全日本柔道連盟の強化委員会は例年、トップ選手を両大会に分散させてきたが、今年はデュッセルドルフに一極集中。同じ大会に出場させて競争心を煽り、選考過程を可視化する狙いだ。
体操では五輪3大会で3個の金メダルを獲得してきた内村航平(リンガーハット)が大ピンチだ。昨年の全日本選手権は肩の負傷でまさかの予選落ち。代表選考会となる4月の全日本個人総合選手権および5月のNHK杯で「キング」の復活はあるだろうか。1984年のロサンゼルス五輪鉄棒の金メダリストである森末慎二氏が語る。
「内村は年齢が31。良い時の感覚と、年齢を重ねることで衰えてきた筋肉の反応にズレ・誤差が生じてきているような気がします。それに加えて肩のケガがあり、練習が不足することでその誤差が広がっている」