開催まであと5か月となった東京五輪。しかし、ここまでには数々のトラブルが発生していた。なかでも、大きな注目を集めたのが、新国立競技場建設計画とエンブレム盗作疑惑だ。
2012年11月、東京五輪とラグビーワールドカップの開催予定会場として、新国立競技場のデザイン国際コンペティションが行われた。そこで選ばれたのがイラク出身でイギリスを拠点として活動する女性建築家ザハ・ハディッド氏(享年65)だった。
斬新なデザインが話題となったが、問題はその予算。
当初は1300億円だったのに対し、ふたを開けてみれば3000億円と膨大な建築費になることが判明。2014年に規模を25%縮小するも、最終的には2560億円にも工費が膨れ上がることとなり、2015年10月の着工を前に安倍晋三首相が建設計画を白紙にすることを決断した。
その後、急遽、デザインを公募したが、応募があったのは隈研吾氏と伊東豊雄氏による2案だけだった。隈氏の案は大成建設との、伊東氏の案は竹中工務店・清水建設・大林組との共同事業による提案で、この時点でデザインと施工がセットであることが条件だった。そして、昨年12月に完成。オープニングイベントが行われ、今年の元日にはサッカー天皇杯が開催された。
こうした流れに、「当初の話とは違う」と怒りをあらわにするのはコラムニストの小田嶋隆さんだ。
「五輪が終わったら、球技用の競技場になるといわれていたのに、フィールドにトラックが残されることになった。これではサッカーなどの球技に使用するには不適切です。その上、世界陸上を開催するのに必要なサブトラックもないため、陸上の国際大会を開くこともできない。高額をかけたにもかかわらず活用の幅が狭く、そのくせ維持・管理費もかかる。間違いなく負の遺産として“お荷物”になるでしょう」(小田嶋さん)