誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、馬券のオッズについてつづる。
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連載のハナで「馬券・ハードボイルド宣言」を立ちあげた。「感傷を排し冷酷な態度で対象を描く文学」(新明解国語辞典)なる定義は競馬にこそ相応しい。競馬場ではたいてい浮かれたり熱くなったりするから。ハナ差で万馬券を逃して泣いたことだってあるし。感傷に長いお別れを。
騎手の好き嫌いなども感傷だ。「乗れている」なんて評価に乗るのは安直だろう。中でも「外国人騎手頼み」ってのはどうなのか。
初心者女性に馬券指南を乞われた先輩作家は「カタカナの騎手を」と冗談交じりに答えた。決着は外国人騎手のワンツー。馬連を的中させた女性に「競馬って簡単ね」と鼻先をあげられたという。先輩の苦笑顔が目に浮かぶようだ。
たしかに腕がいい。長い脚を利して巧みに馬の重心を操作し、力を溜め、強く前進させる。これが外国人騎手共通の特長らしく、道中の位置取りも巧みで追い出しのタイミングも精妙。馬券検討の信頼に足ることは間違いない。
その代表は3年連続リーディングのC.ルメール。去年は164勝で勝率.252、連対率.442、3着内率.562というのは驚異的だ。単勝を4回買えば必ず的中するというわけだった。
だが、彼の単勝を買い続けたときの回収率は70%程度。単勝オッズが1倍台というケースが多く、当たるけれど儲からない。他のリーディング上位を見回しても、100%を超えているのは丸山元気、池添謙一、幸英明、藤岡佑介ぐらいだ。