NHK Eテレ『きょうの料理』への出演でおなじみ、95才の現役料理研究家、“ばぁば”鈴木登紀子さんが、後世に残していきたい冬の味を教えてくれます。
* * *
今年は暖冬のせいか、お野菜が比較的豊作で、手頃にたっぷりとお料理できるのが有り難く思います。
暖冬とはいえ、新型コロナウイルス感染症という恐ろしい肺炎や、インフルエンザも流行っていて油断は大敵。しっかりと食べて休息をとって、免疫力を強くしておきたいものです。
かく言うばぁばも、昨年暮れに少し体調を崩し、しばし入院しておりました。退院してからも、しばらくはどうにも口がまずくて食欲が戻らず、すっかりスリムになってしまいました。
「そろそろパパのお迎えかしら…」と一時は覚悟を決めましたが、食欲の回復とともに体形も復活して、今年1月にはお料理教室も再開。「生きることは食べること」を改めて実感した次第です。どうやらパパも、まだ私には来てほしくないようですわね(笑い)。
さて今回は、食べ応え、栄養ともに満点の「嶺岡煮」をご紹介します。
“嶺岡”とは千葉県の房総半島にある嶺岡山地のことで、江戸時代にここで乳牛の飼育が始まり、日本では牛乳のことを“みねおか”と呼びました。そして牛乳を使ったお料理は“嶺岡”の冠が付くようになったといいます。
「嶺岡煮」は、牛乳を使ったスープ煮。本葛を使って少しとろみをつけ、上品な口あたりに仕上げます。ばぁばの子育て全盛期には、コンソメを加えてコクを出し、子供が好む味にしていました。
今回は鮭とかぶをメインに作りましたが、鮭を帆立にしてもおいしいですし、牛肉と白菜の組み合わせなら殿方にも喜ばれると思います。根菜なら何を入れても、牛乳とおみそ、そして本葛が上手にやさしく味をまとめてくれますから、具だくさんのスープ煮になさってもよろしいわね。
寒さに耐え、甘みと栄養をギュッと内包する冬の根菜には、体を元気にしてくれる力があります。ちょっと体が弱っているなぁと思ったら、ぜひお試しを。ほたほたとやさしく煮るのがコツですよ。