世の中はどんどん不寛容な方向に動いている。このままでいいのか、と感じている人も少なくないのではないか。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。
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人生は、なかなか思った通りにはいきません。仕事でミスをして部下に白い目で見られたり、たまに勇気を出して家族に話しかけたら冷たく流されたり、立ち飲み屋でチューハイを頼んだのにレモンハイが出てきたり……。だからと言って、やるせなさを溜め込みすぎると、周囲や世の中に怒ってばっかりの困ったおっさんになってしまいます。
そんなときは「おっと、マヌケなことやっちゃった」「あらら、マヌケなことになっちゃった」と呟いて苦笑いすれば、それで大丈夫。自分を責めて落ち込んだり、誰かに怒りを覚えたりする必要はまったくありません。
〈たいていの失敗は「マヌケだね」で済んじゃう。たいていの悩みも「マヌケだね」で片づいちゃう〉
これは萩本欽一さんの最新刊『マヌケのすすめ』(ダイヤモンド社)にある言葉。笑いで私たちを救ってくれている欽ちゃんが、今度は「マヌケ」で私たちを救ってくれる本を出しました。何を隠そう、不詳石原、ほんの少しお手伝いしています。
子どもの頃からの憧れの存在である欽ちゃんが、目の前で「マヌケ」についての持論を展開し、二郎さんや清六さんやパジャマ党のマヌケな秘話を語ってくれている──。そのこと自体も、欽ちゃん直伝でマヌケの素晴らしさを学べたのも、とても幸せな体験でした。
今の世の中や今の私たちにもっとも足りていないのは、たぶん「マヌケ」です。常に鵜の目鷹の目で誰かの失言や落ち度を探し、標的を見つけると罵詈雑言を投げつける。自分が標的になるのが怖いから、表面を必死で取り繕い、さりげなく他人を批判して矛先をかわす。もしかしたらあなたも、無意識のうちにそんな毎日を送ってはいないでしょうか。あらためて考えると、じつに不毛で極めてくだらない構図です。
それもこれも「マヌケだと思われてはいけない」「マヌケなことをしてはいけない」と思い込んでいる人が多いから。誰しも本当はマヌケなのに、みんなそれを無理に隠そうとするせいで、世の中はどんどん世知辛くなり、寛容さが失われ、仕事も人間関係も窮屈になっています。
このままでは夢も希望もありません。世の中をひっくり返すのは容易ではありませんが、とりあえず自分をひっくり返せば、似たような効果があるはず。ここは欽ちゃんがすすめてくれている「マヌケ」の力にすがりましょう。まずは「しょせん自分はマヌケな人間なんだ」と認めることが、人生を好転させる第一歩。
その上で、せっかくのマヌケを生かすには、いくつかのコツがあります。本にある欽ちゃんの言葉から、運や幸せを引き寄せる「いいマヌケ」になるコツを探ってみましょう。