この冬は記録的な大暖冬、しかも世界的な異常気象だ。年明け早々に春の嵐のような暴風が吹き荒れ、真冬なのに汗ばむような日があるかと思えば、急に寒風が肌を刺す。毎日、天気予報が見逃せない。
こういった気象の変動は、少なからず心身に影響を及ぼすという。特に今から春にかけては脳卒中や心臓病、さらには認知機能低下まで、高齢者にとっての気になるリスクが上がる。
気候と病気の関係を研究し、気象予報士でもある脳神経外科医、福永篤志さんに聞いた。
◆気候変動が病気の引き金に 記憶や認知機能の低下も
「人間は恒温動物。どんなに寒くても暑くても、体の深部体温が36~37℃に保たれるように自然と体が調整しています。実はこの働きが“気象病”の引き金になっています」と、福永さんは言う。
気象病は“気象の変化と関係がある”と思われる病気だ。確かに快晴の時は気分も爽快、曇天や長雨が続くとなんだかだるい。天気の影響は肌身に感じられる。
「体温調整で働くのは血管です。体の外が暑ければ末梢血管を広げ、汗をかいて熱を発散する。寒ければ血管を収縮させて体の中心に血液を集めて熱が逃げないようにする。
若い時は血管が柔軟なので、こんな血管の伸縮もスムーズですが、中年以降、高齢になるにつれて血管が硬くなり、特に寒さで血管が収縮した時血圧がグンと上がります。それによって脳卒中(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)や心臓病(心筋梗塞、狭心症)などのリスクが高まります」