2月1日午前2時過ぎ、茨城県南部を震源とするマグニチュード5.3の地震が関東地方で発生した。深夜に鳴り響いた携帯電話の緊急地震速報のアラート音に飛び起きた人も多いだろう。
その時、とっさの事態に「何をすればいいのかわからない」と不安になった人もいたはずだ。幸いにも、今回の地震は大きな被害に至る規模ではなかったが、「30年以内に70%の確率で起こる」と国が警告している「首都直下地震」は、一瞬にして生活が激変する大規模な被害が予想されている。関東学院大学工学総合研究所の若松加寿江さんが指摘する。
「震度6強以上の揺れが東京都心を襲うとされますが、東京に住むほとんどの人は過去に大規模災害を経験したことがないため、対策への意識が低いと感じます。ライフラインが途絶えたあとの備え、食料の備蓄、家族との合流手段など、必要な対策は各家庭で違います。家族全員でしっかりシミュレーションしておかなければいけません」
若松さんの教え子であるSさんは、2011年の東日本大震災を地元の福島県・大熊町で経験した。音を立てて崩れる体育館から逃げ出し、その後3日間、家族と連絡が取れないまま過ごしたという。
「自分で考えて行動する力を身につけておくことが重要」と話すSさんは、「自宅の耐震性、地盤条件、周辺状況を確認」「今いる場所がどういう地形で、どういう災害の危険性があるのか考えておく」など、リスクを把握する必要性を痛感したという。たとえば、東京23区内の墨田区・文京区・台東区周辺は、こんな地盤条件になっているという。
「墨田区のような標高の低い地域は軟弱地盤による揺れやすさに加え、水害の危険も高い。一方、文京区は広範囲が台地なので比較的安全だと思いがちですが、かつて『池』だった土地や『谷底』だった地域が点在しています。上野公園の『不忍池』を埋め立てた上に住んでいるようなものです。そういった地域は地盤が軟らかく、台地と少ししか離れていないのに、揺れの大きさがまったく変わってきます」(若松さん・以下同)