新型肺炎の流行で4月に予定されている習近平・中国国家主席の国賓での来日が微妙になっている。これも、「総理の支持基盤である保守派には国賓招待に批判が強いだけに、延期なら好都合」(自民党議員)という。

 その挙げ句、自民党には国民の不安に便乗して新型肺炎を憲法改正に利用しようという声まであがっている。

 自民党の憲法改正案には大規模災害やテロ対応などで私権を制限して政府に強い権限を与える「緊急事態条項の新設」が盛り込まれている。

 伊吹文明・元衆院議長が会合で、「(新型肺炎は)緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えたほうがいいかもしれない」と発言すると、下村博文・前自民党憲法改正推進本部長も、「(新型肺炎拡大を)議論のきっかけにすべきではないか」とぶち上げた。

 政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。

「政府は感染が拡大するクルーズ船の乗客全員の検査をもっと早くやるべきでした。それなのに検査の人員を出し惜しんで時間がかかった。行政の対応がこれでは、たとえ緊急事態条項をつくっても同じことが繰り返される。必要なこともやらずに憲法改正など火事場泥棒の発想でしかない」

 最前線で戦う人たちの思いに、この政権は応えられていない。

※週刊ポスト2020年2月28日・3月6日号

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