79歳となった今も、球界の未来のために精力的な活動を続けているのが、王貞治・ソフトバンクホークス球団会長だ。年初にテレビ番組で発言した「プロ16球団構想」は大きな話題となった。同時代に活躍したレジェンドたちが次々と鬼籍に入る中、「受け継いでいくべき球界の財産」と「変えていくべき課題」について“世界の王”が語った。
◆カネさんは「走り込み」の元祖
お別れの会の顔ぶれを見て、“さすがカネさんだな”と感じましたね。野球関係者だけでなく、政財界や芸能界からも大勢の人が手を合わせに来ていた。あの人を見送るのはもっと先のことだと思っていたけど……。
〈1959年に巨人に入団した王氏にとって、国鉄―巨人で活躍した400勝投手の故・金田正一氏(享年86)は手強いライバルであり、心強いチームメイトでもあった。本誌・週刊ポストでは25年以上、金田氏、長嶋茂雄氏、王氏による「ONK対談」を開催。オフにフグ料理を囲みながら、マネージャーも凍りつくような暴露話から球界の未来まで“本音”で語り合った〉
国鉄時代のカネさんといえば、長嶋さんのデビュー戦で4打席連続三振を奪ったことが有名ですが、実は僕もデビュー戦で洗礼を受けています。翌年の開幕試合で初対戦して2打席連続三振(3打席目は四球)。球種は直球とカーブしかないが、真っすぐは物凄く速いし、カーブはバッターの近くでカクンと大きく曲がる。普通、サウスポーには右打者が有利で左打者が不利だというけど、カネさんの場合は逆。あのカーブは右打者の胸元に食い込んでくるから打ちにくい。だから長嶋さんより僕のほうが打ちやすかったはずだけど、それでも“あんな球は打てない”と思いましたね。
その後、22歳で一本足打法を始めてからは、カネさんからもそこそこホームランが打てるようになりました。6年間で13本かな。カネさんが「懐が深くていい」と褒めてくれて自信につながったのを覚えています。