医療モノや刑事モノが多い今期ドラマにあって、長編ミステリーというジャンルに挑んだ2作が『テセウスの船』(TBS系)と『10の秘密』(カンテレ、フジテレビ系)だ。だが、この2作品、視聴率でも、ネット上の評価でもはっきりと明暗が分かれてしまった。その違いはどこにあるのだろうか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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2020年1月スタートの冬ドラマは、プライム帯(19~23時)に放送される16作のうち、医療現場が舞台のものが6作、刑事事件を扱ったものが6作放送され、その大半が一話完結型の物語であるなど、これまでにないほど作品ジャンルと構成の偏りが見られます。
偏ったことで必然的に注目度が上がったのは、『テセウスの船』と『10の秘密』の2作。どちらも近年「視聴率が獲れない」と言われ、めったに見られなくなった長編ミステリーであり、その点で文句なしの意欲作です。
しかし、1か月あまりが過ぎた今、残酷なまでの明暗が分かれてしまいました。序盤は両作とも放送日にネット上の話題を席巻していたものの、中盤に入ると『テセウスの船』が「今期最高のドラマ」と言われ、犯人の考察で盛り上がる一方、『10の秘密』は書き込みそのものが減ってしまったのです。
視聴率に目を向けても、『テセウスの船』は第1話から11.1%、11.2%、11.0%、11.0%、11.8と安定し、最新話が自己最高を更新。新作ドラマの中で『トップナイフ -天才脳外科医の条件-』(日本テレビ系)と熾烈な首位争いをしています。一方の『10の秘密』は8.9%、7.9%、6.7%、6.2%、5.4%、6.4%と1桁中盤で停滞。とりわけ2月に入ってからプライム帯で放送される民放ドラマの最下位に陥り、「視聴率が下げ止まらず」「打ち切り寸前」と報じられるなど厳しい結果となっています。
なぜ「今期最高と書き込み減」「視聴率首位争いと最下位」という残酷なまでの明暗が分かれてしまったのでしょうか。