父が急死したことで認知症の母(85才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(55才・女性)。認知症患者とスマホの関係を明かす。
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亡き父は不器用ながら携帯電話に果敢に挑んでいたが、「機械の世話にはならない」が信条の母は無関心。無理して使う必要もないが、実はいま、みんなが手にするスマホは気になっている。ある日、家族の写真を撮ると言い出した。
◆父との新たな交流が生まれた携帯メール
「パパは携帯電話とか難しいことに挑戦して偉かった」──父の遺品の二つ折りガラケーを見るたびに、母は言う。
父が元気だった10年前頃には、両親ともに認知症の兆しがあったが、父はパソコンや携帯電話を自ら買いに行き、使い方がわからないと私の夫がいちいち呼び出された。「面倒くさいな」と思いつつも、堅物だった父の意外な発展ぶりを、少し見直していた。
両親と遠方の法事に出かけたときのことだ。待ち合わせ場所にふたりが現れず、父の携帯に電話をかけても応答しない。迷子か事故か。私は焦って考えた。生真面目な父が電話に出ないのは、電車に乗っているのだ。メールで連絡できればよいが、父とはメールをやりとりしたことがない。でも一か八かやるしかない。
「パパ電車に乗っているなら、最寄り駅で降りて私に電話してください」と送ってみた。するとしばらく間をおいて、「し」と返ってきた。意味不明だがメール開通だ。続いて「しょ」「小生は」「小生は」と立て続けに来た。
そのとき、なぜか、子供の私を抱き上げた若い父、仕事人間だった父、なんとなく私が疎んじて寂しそうだった父などが頭の中を巡った。そして、最新ツールで父が私に語りかけていることに感動した。
ほどなく父から電話。なんと法事の場所に到着していた。この“まだらボケ”具合に私は怒り心頭だったが、何か心の奥は温かかった。晩年の父との懐かしい思い出だ。
◆母、スマホカメラに挑戦! 連写モードで大笑い