小学校から進学塾に通い、東大合格率の高い私立の中高一貫校に進学する──こんな“東大受験の常識”を打ち破ったのが、非進学校から合格した学生たちだ。彼らが直面した逆境や孤独、そしてそれを乗り越えた原動力とは?
東大に『東大フロンティア・ランナーズ(UTFR)』というサークルがある。彼らは「非進学校から東大に合格した」現役東大生だ。そのUTFRに所属する11人の東大生へのインタビュー集『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』(小学館)が2月26日に発売された。同書にも登場する東大生の1人に話を聞いた。
◆環境や日常に問題意識を持って、一歩踏み出せるのがぼくらの強み
取材を申し込むと、写真撮影をする場合の候補として3か所がピックアップされ、その優先順位と理由が簡潔に書かれていた。
そんな“打てば響く”メールの主は、大野康晴さん(21才)。撮影中、通りがかりのスイス人から「君はモデルなの?」と話しかけられるほど、スタイリッシュな“イマドキ東大生”。しかしその素顔は、気遣いを絶やさない、心優しい青年だ。
大野さんは、大阪の公立小学校を卒業後、“荒れている”と噂の公立中学に行きたくない一心から、私立上宮太子中学校(現在は募集停止)の特進コースを受験し、特待生として入学。上宮太子高等学校(偏差値49~55)に進学し、2017年に現役で文科三類に合格。同校からは7年ぶりの東大合格となった。
「いわゆる“神童”では全くなく、小6の模試では、苦手な算数と理科の偏差値は38、国語と社会を合わせた4教科で50台という成績でした。ただ読書は小さい頃から好きで、歴史の雑誌を中心にいろいろな本を読んでいました」
中学入学後のテストで学年首位に。あまり勉強せずに好成績を取れてしまったことで“慢心”した大野さんは、ゲームに没頭。
「ゲーム漬けだった中1の冬、ふと気づいたんです。いまのぼくから勉強を取ったら何が残るんだろうって。当時のぼくは、ほっそいメガネをかけた天パのぽっちゃり体形で、運動神経もよくないし、顔がいいわけでもない。根暗で人と喋れないし、典型的な陰キャ(地味なキャラクター)でした。このまま一生日の当たらない生活を送るんじゃないか…。それから1日2時間、コツコツ勉強をする生活が始まりました」