時代の移り変わりを示すのがCM。近年、紅茶のCMが変化している。その内容や登場するタレントはどう変わってきたのか? 紅茶CMを長年チェックしてきたコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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最近、紅茶のコマーシャルが変化してきている。代表例が、キリン『午後の紅茶』。午後ティーのCMといえば、長く女性キャラクターの印象が強かった。古くは1990年代の小泉今日子。おしゃれリーダーでもあった彼女が、ガレージセールに出たり、星の観察をしたりしながら、『午後の紅茶』を楽し気に飲めば、おしゃれ女子は飲まずにいられない。愛飲者にプレゼントされた『コイズミトランク』も毎年デザインが変わって、女の子たちに人気だった。ちなみに当時の主流は、缶入りである。
その後、2000年代には松浦亜弥が登場。夏は氷を入れた大ジョッキに紅茶を注ぎ、「グッビグビ!!」と飲み干したり、ハトの被り物をして三時には午後の紅茶をと歌い踊る松浦は、お茶を楽しむというキョンキョンの文化系路線から、一気にゴクゴクの体育会系に変化。プレゼントのトランクの通称も「あやトラ」とパンチがある。元気のいい女の子の象徴的CMだった。
さらに2010年代には、スーツ姿の新入社員・蒼井優がオフィスで紅茶を飲みながら一息ついたり、コンビニで「箱入り!」と驚きながら、女子高生たちに人気の箱入り紅茶を手にしたりと働く女性路線に。近年は、上白石萌歌がaikoの『カブトムシ』やスピッツの『楓』など青春路線のシリーズも話題になってきた。
そんな流れを経ての今年の『午後の紅茶』。「紅茶派。」をキャッチフレーズにしたCMに出てくるのは、深田恭子、新木優子、リリー・フランキーである。「紅茶派宣言篇」「紅茶派宣言 ありのままの私篇」では、仕事をしたり、友だちと笑ったりしつつ、紅茶を飲む三人がそれぞれ映し出される。仕掛けもギャグもなし。ありのままに三人の横にさりげなく紅茶があるのがミソ…と言いたいが、このCMで一番「さりげないミソ」は、リリー・フランキーの存在だ。はるか遠い国から紅茶の国にやってきたおじさんが、「コーヒー派から寝返っちゃおうかな」とつぶやきながら、ここにいることこそ、『午後の紅茶』が一歩違う路線へと進み出た証である。