2月22日、東京都内の介護老人保健施設に勤務する送迎ドライバーが新型コロナウイルスに感染したことが明らかになった。感染が拡大するなか、介護現場で働く人たち、とりわけ「ドライバー」の役割を担う職員たちの間で、危機感が高まっているという。
「やっぱりきたか」──送迎ドライバーから感染者が出たというニュースを耳にした時、藤田修さん(仮名)はそう感じたという。神奈川県にあるデイサービス事業所の職員である藤田さんは、平日の午前中、主に送迎の仕事を担当している。
「利用者のお宅までうかがって、車に乗せ、デイサービスの事業所までお連れする。簡単なようですが、一歩間違えば大きな事故につながる危険がある、緊張感ある仕事です」(藤田さん)
藤田さんの勤める事業所は、送迎車として9人乗りのバン1台と、2台の軽自動車を使い分けている。
「毎日コースを決めて利用者の皆さんをピックアップするのですが、そのたびに濃厚接触です」(藤田さん)
介護事業所の送迎ドライバーはハンドルを握るだけの仕事ではない。利用者の自宅の玄関先まで行って、場合によっては靴を履かせ、自分の足で歩ける利用者なら見守りながら、歩行に難のある人なら手引きや車椅子で送迎車まで連れていき、乗り込ませる。自分でシートベルトを使えない人も多いので、その着用も手伝う。
さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、最近は車に乗せる前の「検温」も必須となっている。厚生労働省は、37.5℃以上の発熱であればデイサービスの利用を控えさせるよう、都道府県などに対し事務連絡で通知している。
「僕の勤めるデイサービスは認知症対応型です。程度はまちまちですが、利用者全員が認知症を患っています。手洗いうがいを徹底している人ばかりではありません。また、高齢の利用者は難聴の人も少なくありません。こちらがマスクをしていると声がこもって聞き取ってもらえないことがあります。だからお世話をする時にマスクを取ることもあります」(藤田さん)