小中高校の臨時休校で、企業が子供たちのためにサービスを「無償提供」する支援が広がっている。Z会はオンライン学習サービスの一部を無料公開。ワタミは、弁当を無料で宅配、ローソンは学童におにぎり3万個の無償提供を決めた。出版界では、小学生女児向けの雑誌『ぷっちぐみ』が発売中の雑誌企画の無料公開をいち早く始め、『コロコロコミック』など複数の漫画雑誌も無料公開している。企業による今回の無償支援は、災害時などに行われてきたこれまでの施策とどこが違うのか? ネットニュース編集者の中川淳一郎さんが解説する。
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今回の臨時休校に伴う各企業の施策には、ネット上では「ありがたい」「子供も親も助かる!」など多くの感謝の声が上がっています。なぜ、多数の支持を集めたのでしょうか。それを述べる前に、過去のこうした「無償支援」について振り返ってみます。
企業が何かを無料で提供するものの元祖といえば、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震などの災害が頭に浮かびます。しかし、ネットが爆発的に広がる前の話だったため、あまり記憶にない人が多いかもしれません。SNSが普及してからの企業や個人による物資等の無償提供は、東日本大震災の時も多くありました。しかし、この時は感謝の声は上がったものの、個人が古着や生鮮食品を送ったり、本当に必要な場所に物資が届かなかったりしたため、現地のボランティアが困ってしまうような事態にもなりました。
だからこそ、送る側としても適切な物資を適切な量、適切な場所に送る必要が出てきます。ネットでは「善意の押し付け」としてむしろ叩かれてしまうこともある。それの最たるものが「千羽鶴」です。「燃やすぐらいしか使いみちがないだろう」といった声が書かれるほか、困っている人からは「こんなものよりも水がほしい」などの声が出てきます。
その点、今回の各企業の施策は、不安を感じている保護者や子供に対して、ピンポイントで支援を行っていると思います。長時間、自宅で待機しなければならない子供にマンガや学習教材、学童に食事提供など、必要なところに必要なものが届けられていると言えます。
また、出版社が行っているインターネット上での雑誌や書籍の無料公開は、輸送代などがかかる施策と違って、多くの人の手間をかけずに、自社を中心に行っている点は特に評価できます。善意での支援というのは、他の人の手をかけずに行うのが基本ですから。