学校で勉強や部活などに励み、友人や先生などと広く人間関係を築く。あるいは働いているなら、仕事の基礎を体に叩き込んでいるころ──そんな世代である16~18歳だが、少なからぬ女性が「望まない妊娠」で傷ついている現実がある。日本において学校での性教育が遅れていることはかねて指摘されてきたが、それをカバーするべきなのは他ならぬ「親」だという。
新刊『産婦人科医 宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』(小学館)を上梓した産婦人科医の宋美玄さんはこう語る。
「厚生労働省の衛生行政報告例(2018年)によると、16~18歳女性の人工妊娠中絶は年間約7000件もあります。この背景にはさまざまな事情があるでしょう。ただ、多くの場合自ら望んで妊娠・中絶しているとは考えられません」(宋美玄さん。以下同)
最近では、女子高校生の20%が「経験者」だという報告もある。妊娠の背景には、相手の男性に嫌われたくないという気持ちから、避妊具を使っていないケースが少なくないことも関係している。そのため妊娠のみならず、高校生の梅毒やクラミジアなどの性感染症患者も増加傾向にあり、将来、望んだ時に性感染症のキャリアだと妊娠しにくくなる危険性も指摘されている。
「家庭で性をタブー視していることも原因の一つだと考えられます。例えば、子供たちは性に関する情報を、友人や先輩、マンガやインターネットから得てしまいます。その中には過激なものや間違ったものが多く、正しい知識は親が教えるしかありません」
生理中は妊娠しないなど、間違った知識で性交渉を行う人は大人でも多い。当然だが、妊娠の可能性はある。
「きちんと教えられる機会がないから、間違った知識で行為を行ってしまう。その結果、傷つくのは多くの場合、女性です」
学校が性について教えてくれているのではないかと思い込んでいる親も多い。
「そもそも、日本では性に関して、国や学校から情報はほとんど発信されません。文科省が定める学習指導要領では、男女の体の違い、妊娠や月経の仕組みを教えても、最も肝心な“妊娠するための行為がセックス”だとは教えては“いけない”ことになっているのです。意外に思うかもしれませんが、小中学校の教育現場では“避妊”もNGワードなのです」