「野村克也さん(享年84)の晩年の姿は、昔の自分のようで見ていられませんでした」──そう振り返るのは、2004年に乳がんで最愛の妻・節子さん(享年67)を亡くしたジャーナリストの田原総一朗氏(85)だ。
田原氏と名将・野村監督は、本誌・週刊ポスト2019年1月1・4日号で「男おひとりさまの老後」をテーマに対談していた。
「やっぱり女房を失くせば寂しいものですよ。僕は彼女に仕事のことも家庭のこともすべて任せきりで、本音で相談できる唯一の“同志”でした。
闘病中は時間が許す限り看病して、着替えを手伝ったり、入浴時には僕も素っ裸になって、女房を抱っこして洗ってあげることもありました。若い頃に戻った気がして、どこか楽しかった。沖縄や韓国など、旅行もいろんな所に行きました。
そんな女房が亡くなったときは自分の体が半分なくなるほどショックを受けて、『もう死ぬしかない』とまで思った。対談で『人生終わりだと思った』『脱け殻になってしまった』と話していた野村監督の気持ちが、痛いほど分かりました」
田原氏は節子さんの遺骨を手放せず、死後3年にわたって自らのデスクに置き続けた。
寂しさのあまり、しょっちゅう箱を開けて遺骨を触っていると、知人の僧侶から「それでは奥さんが安眠できませんよ」と諭され、ようやく墓に納骨した。
失意の田原氏を救ったのは「娘」と「仕事」だったという。