新型コロナウイルスの影響により、異例の無観客状態で開催することとなった第43回日本アカデミー賞の授賞式。6日、作品賞や監督賞など10部門以上で、1月に発表されたノミネート(優秀賞)作品および人物のなかから最優秀賞が決定される。
日本アカデミー賞は、世界的な映画祭として知られる米国のアカデミー賞の選考を行っている映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences、AMPAS)から正式な許諾を得て1978年に発足した。日本最大級の映画賞である一方、賛否両論が巻き起こってきたのも事実だ。
発足当初より、巨匠・黒澤明監督をはじめ、勝新太郎や石原裕次郎らの名優、さらに作曲家の武満徹などから「アメリカの真似事だ」と言われてきた。近年も、受賞作品が大手映画会社に偏りがちであることを北野武監督が批判したほか、テレビ放送時に視聴率が取れる作品ばかりノミネートされていると映画ライターから指摘されることもあった。
とはいえ、年に一度の映画の祭りであることもまた事実。トロフィーの行方を予想するのもいいが、映画好きの本音を言えば、自ら“最優秀賞”を選出したいところではないか。そこで今回、日本映画に詳しい3人の識者(小野寺系、寺脇研、LiLiCoの各氏)の意見をもとに、主演男優賞・女優賞にノミネートされた俳優のなかから“真に注目すべき人物”を選出することにした。すると、興味深いことに満場一致で2人の俳優の名前が挙がることとなった。
まず、主演女優として注目したいのは、韓国出身のシム・ウンギョン(25)である。1994年生まれの彼女は9歳のころより役者として活躍し、2011年に主演した韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』が大ヒットを記録、一躍世間に知られることとなった。
そんな彼女は藤井道人監督の映画『新聞記者』で、帰国子女の記者・吉岡エリカ役を演じた。真実を求めて権力に屈することのない役柄と相まって、多くの観客を魅了した彼女の演技力の高さを、映画評論家の小野寺系氏は次のように評する。
「日本語の発音は不安定だが、韓国の第一線の俳優だけあって、表情だけでも十二分に役の感情が伝わってきて圧倒される。2019年公開の『ブルーアワーにぶっ飛ばす』では、全く異なる軽快な演技を見せ、日本映画というフィールドでも、強い印象を残している。すごい俳優」