ライフ

【川本三郎氏書評】事件や負の歴史と地形との関わりを描く

『地形の思想史』原武史・著

【書評】『地形の思想史』/原武史・著/KADOKAWA/1800円+税
【評者】川本三郎(評論家)

 学者は地方へ旅に出なければいけない。東京を中心とした首都圏にいただけでは現代も、そして過去の歴史も見えてこない。柳田國男の考えに導かれるように日本政治思想史研究者の著者は地方へ旅に出る。旅から日本の近代を、さらには歴史の古層を考えてゆく。司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズを受継いでいる。

 地形を手がかりに旅をする。岬、峠、島、山麓、湾、台地、そして半島。具体的には浜名湖の奥にある岬、奥多摩から甲州にかけての峠、瀬戸内の島、富士山の麓、東京湾岸、相武台と呼ばれる相模の台地、そして大隅半島。第一章の岬から引き込まれる。これまであまり語られてこなかったことだから。

 浜名湖の奥にプリンス岬と呼ばれる小さな岬がある。なぜその名が付いたのか。現上皇は皇太子時代、家族と共にこの岬に八回も訪れ夏の休暇を過した。子供だった浩宮(現天皇)は湖で泳いだり、地元の子供たちとソフトボールを楽しんだりした。一家が泊ったのは御用邸ではなく民間の木造平屋住宅だった。著者は、一家がそこで固苦しい暮しをいっとき離れ、マイホームを楽しんだのではないかと推測する。

関連記事

トピックス

電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
女性2人組によるYouTubeチャンネル「びっちちゃん。」
《2人組YouTuber「びっちちゃん。」インタビュー》経験人数800人超え&100人超えでも“病まない”ワケ「依存心がないのって、たぶん自分のことが好きだから」
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、大学進学で変化する“親子の距離” 秋篠宮ご夫妻は筑波大学入学式を欠席、「9月の成年式を節目に子離れしなくては…」紀子さまは複雑な心境か
女性セブン
ニューヨークのエンパイヤ・ステイトビルの土産店で購入したゴリラのぬいぐるみ「ゴンちゃん」は、公演旅行に必ず連れて行く相棒
【密着インタビュー】仲代達矢・92歳、異色の反戦劇を再々演「これが引退の芝居だと思ってもいないし、思いたくもないんです」 役者一筋73年の思い
週刊ポスト
品川区にある碑文谷一家本部。ドアの側に掲示スペースがある
有名ヤクザ組織が再び“義憤文”「ストーカーを撲滅する覚悟」張り出した理由を直撃すると… 半年前には「闇バイト強盗に断固たる処置」で話題に
NEWSポストセブン
現在は5人がそれぞれの道を歩んでいる(撮影/小澤正朗)
《再集結で再注目》CHA-CHAが男性アイドル史に残した“もうひとつの伝説”「お笑いができるアイドル」の先駆者だった
NEWSポストセブン
『THE SECOND』総合演出の日置祐貴氏(撮影/山口京和)
【漫才賞レースTHE SECOND】第3回大会はフジテレビ問題の逆境で「開催中止の可能性もゼロではないと思っていた」 番組の総合演出が語る苦悩と番組への思い
NEWSポストセブン
永野芽郁の不倫騒動の行方は…
《『キャスター』打ち上げ、永野芽郁が参加》写真と動画撮影NGの厳戒態勢 田中圭との不倫騒動のなかで“決め込んだ覚悟”見せる
NEWSポストセブン
電撃の芸能界引退を発表した西内まりや(時事通信)
《西内まりやが電撃引退》身内にトラブルが発覚…モデルを務める姉のSNSに“不穏な異変”「一緒に映っている写真が…」
NEWSポストセブン
入院された上皇さまの付き添いをする美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、入院された上皇さまのために連日300分近い長時間の付き添い 並大抵ではない“支える”という一念、雅子さまへと受け継がれる“一途な愛”
女性セブン
交際が伝えられていた元乃木坂46・白石麻衣(32)とtimelesz・菊池風磨(30)
《“結婚は5年封印”受け入れる献身》白石麻衣、菊池風磨の自宅マンションに「黒ずくめ変装」の通い愛、「子供好き」な本人が胸に秘めた思い
NEWSポストセブン
母の日に家族写真を公開した大谷翔平(写真/共同通信社)
《長女誕生から1か月》大谷翔平夫人・真美子さん、“伝説の家政婦”タサン志麻さんの食事・育児メソッドに傾倒 長女のお披露目は夏のオールスターゲームか 
女性セブン