映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、中村梅雀が小さい頃に嫌いだった時代劇と関わるようになってからのこと、他の役者が見て悔しがる芝居をやりたかったことについて語った言葉をお届けする。
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中村梅雀は『赤かぶ検事』シリーズ、『信濃のコロンボ』シリーズなど、テレビの二時間ドラマに数多く主演、人の好さげな飄々とした芝居を演じてきた。
「まあ、得意分野なんでしょうね。僕自身が飄々として見えるところがありますから。実際はそうではないんですが、そう思わせている部分が生きてるんですよ。ですから外面ですね。刑事や検事も外面を持っているわけですから、そういうごまかし方は共通しているんでしょう。
でも、基本的には『中村梅雀』としていかに生きるかということを考えて頑張ってきました。それから、監督さんが凄い人ばかりだったのもあります。
たとえば江崎実生さんには『ここは踊ってもらいたいんだけどね』と要求されたりしました。『二時間ドラマではインパクトが必要なのでここは大げさに』『ここはシリアスに』『ここは立て板に水でブワッと』といった具合に、僕の緊張感と使命感を上手くたきつけて追い詰めて集中させて、コントロールしてくれましたね」
二〇一一年、時代劇専門チャンネル初のオリジナル時代劇『鬼平外伝 夜兎の角右衛門』に主演、それを前後してテレビ時代劇の多くで重要な役柄を演じるようになっている。