IOC(国際オリンピック委員会)はいまだ本格的な議論に入っていないが、日本列島を襲う“コロナショック”により、予定通りの東京五輪開催に暗雲が立ち込めている。万が一、延期や中止といった決断がされた場合、大きな影響を受けそうなのが東京の不動産市場である。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、最悪のシナリオを予測する。
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あまり考えたくない事態ではあるが、もしかしたら「東京五輪が開催できない」という事態があり得るかもしれない──という情勢になってきた。
例えば、仮に来週開催というスケジュールだったら、これは確実に中止か延期とせざるを得ないが、このまま新型コロナウイルスの感染拡大が続けば、延期でも「1年後」、もしくは「開催日未定」となってしまいそうだ。
つまり、今の状況が5月頃までに急激に改善し、コロナウイルス拡散の終息が見えて来なければ、おそらくは「延期」か「中止」となるだろう。
この場合、日本経済には大きな打撃となるはずだ。GDPに対するマイナス効果は数千億円で済むのか。あるいは兆の単位になる可能性だってある。そうなれば2020年の経済成長は、ほぼマイナスになることは確実。日本経済はリーマンショック以来の強烈な不況に突入することになる。
困ったことに日本はこの未曽有の不況に対して、有効な金融政策を打てない。その理由は、金融緩和の選択肢がほとんど残されていないからだ。
日本の金融政策は、リーマンショック後の金融緩和が中国やアメリカに周回遅れの時期に開始され、その後「物価上昇率2%」などという非現実的な目標を7年も掲げたせいで、今も異次元緩和状態が続いている。これ以上緩和のしようがない状態なのだ。
そして、この迫りくる「五輪中止不況」で、最も甚大な影響を受けるのは不動産市場ではなかろうか。