新型コロナ禍は街場の飲食店を直撃している。事態が長引けば当然、切迫の度合いは増す。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が、サバイバルの方法について指摘する。
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深刻なことになってきた。例のウイルス自体も、そのせいで全国的に飲食店が閑散としてしまっている。例えば東京では、大手広告会社の電通が5000人、資生堂が8000人、パナソニックが2000人とこの10日ほどで大手企業が次々に在宅勤務、出社禁止に踏み切った。近隣の新橋、汐留、銀座などの飲食店では閑古鳥が鳴いている。
少し前までの銀座は、インバウンド需要も多かった。平日の日中から中国、韓国ほか欧米からの観光客でにぎわい、歩道は埋め尽くされ。レストラン専門誌の編集者も「本来なら送別会シーズン真っ盛りのはずが、数十名単位の予約をキャンセルされる店が続出しています。耳にしたなかでは、トータルで1000名以上ものキャンセルが出た店も。このままだと、1~2か月で個人飲食店がバタバタとつぶれかねない。事態は非常に切迫しています」と嘆息する。
しかも今回の新型コロナウイルスについては1~2か月で収束するとは到底考えられない。そうなると体力のない、街場の個人飲食店は苦しくなる。しかし、日本の食のムーブメントは、元を正せば個人の飲食店から発信されてきた。事態が収束するまでの間、持ちこたえられるよう、さまざまな形でサポートが求められる。
以下に、この数か月を生き抜くために必要な制度やサービスを紹介しておくが、個人店の店主には、こうした仕組みに疎い人も少なくない。もし読者のみなさんに大切にしたい個人店があるなら、いつもの「ごちそうさま」「おいしかったよ」という一言だけでも勇気を与える。加えて「おせっかいかもしれないけど……」と口添えをしていただけると、地域にある小さないい店を失わずに済むかもしれない。
●公的機関の支援策
経済産業省はこの6日から、新型コロナウイルスで経営が悪化している飲食店などを対象に金融機関からの融資限度額が2倍になる「セーフティネット保証制度」の対象条件を緩和した。対前年比で売上が落ちている中小企業に融資額の100%を信用保証する「セーフティネット保証4号」(自然災害等の突発的事由(噴火、地震、台風等)で経営の安定に支障を生じている企業向け)の適用に加えて、80%保証の「5号」(全国的に業況の悪化している業種に属することにより、経営の安定に支障を生じている企業向け)も追加した。
その他、商工中金は「経営相談窓口」を全営業店に設置済み。日本政策金融公庫も「新型コロナウイルスに関する相談窓口」を全国の支店に設置し、休日の電話対応なども検討中。さらに過去にBSEやSARS、鳥インフルエンザ関連でも発動した、「衛生環境激変対策特別貸付」も行われることに。中小機構も経営相談窓口を設置したが、感染拡大防止の観点から電話やメールを中心に対応していくという。
公的機関だけではない。不特定多数からインターネット経由で資金を集めるクラウドファンディングの「キャンプファイヤー」は損失が省営できる書類を提出すれば、通常のサービス利用料12%が免除され、決済手数料の5%のみで資金を集めることができる。
●デリバリー業態への進出
資金は単なる運転資金だけでなく、新たな事業展開に活用する道もある。特に街に人が出ないいま、活況を呈しているのがデリバリーサービスだ。街に出なければ飲食店には来られない。ならばこちらから届けに行く。客席のない「ゴーストレストラン」というデリバリーに特化したレストランも増えていている。
近年では、外部のデリバリー業者も充実の一途で、「出前館」「Uber Eats(ウーバーイーツ)」「楽天デリバリー」「ファインダイン」「LINEデリマ」などのデリバリー専門サービスが目白押し。デリバリーに向いたメニューなどは各デリバリー業者も相談に乗ってくれる。店舗での営業許可があれば、デリバリー業態への進出も基本的には問題ない。
リモートワークなどで、デリバリー需要が激増しているいま、デリバリー用のメニュー開発に力を注ぐのもムダにはならないはずだ。