国内

新型コロナ禍で経営が切迫する飲食店がサバイバルする方法

訪日客激減に加えてマスク姿の外国人も目立つように(時事通信フォト)

訪日客激減に加えてマスク姿の外国人も目立つように(時事通信フォト)

 新型コロナ禍は街場の飲食店を直撃している。事態が長引けば当然、切迫の度合いは増す。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が、サバイバルの方法について指摘する。

 * * *
 深刻なことになってきた。例のウイルス自体も、そのせいで全国的に飲食店が閑散としてしまっている。例えば東京では、大手広告会社の電通が5000人、資生堂が8000人、パナソニックが2000人とこの10日ほどで大手企業が次々に在宅勤務、出社禁止に踏み切った。近隣の新橋、汐留、銀座などの飲食店では閑古鳥が鳴いている。

 少し前までの銀座は、インバウンド需要も多かった。平日の日中から中国、韓国ほか欧米からの観光客でにぎわい、歩道は埋め尽くされ。レストラン専門誌の編集者も「本来なら送別会シーズン真っ盛りのはずが、数十名単位の予約をキャンセルされる店が続出しています。耳にしたなかでは、トータルで1000名以上ものキャンセルが出た店も。このままだと、1~2か月で個人飲食店がバタバタとつぶれかねない。事態は非常に切迫しています」と嘆息する。

 しかも今回の新型コロナウイルスについては1~2か月で収束するとは到底考えられない。そうなると体力のない、街場の個人飲食店は苦しくなる。しかし、日本の食のムーブメントは、元を正せば個人の飲食店から発信されてきた。事態が収束するまでの間、持ちこたえられるよう、さまざまな形でサポートが求められる。

 以下に、この数か月を生き抜くために必要な制度やサービスを紹介しておくが、個人店の店主には、こうした仕組みに疎い人も少なくない。もし読者のみなさんに大切にしたい個人店があるなら、いつもの「ごちそうさま」「おいしかったよ」という一言だけでも勇気を与える。加えて「おせっかいかもしれないけど……」と口添えをしていただけると、地域にある小さないい店を失わずに済むかもしれない。

●公的機関の支援策

 経済産業省はこの6日から、新型コロナウイルスで経営が悪化している飲食店などを対象に金融機関からの融資限度額が2倍になる「セーフティネット保証制度」の対象条件を緩和した。対前年比で売上が落ちている中小企業に融資額の100%を信用保証する「セーフティネット保証4号」(自然災害等の突発的事由(噴火、地震、台風等)で経営の安定に支障を生じている企業向け)の適用に加えて、80%保証の「5号」(全国的に業況の悪化している業種に属することにより、経営の安定に支障を生じている企業向け)も追加した。

 その他、商工中金は「経営相談窓口」を全営業店に設置済み。日本政策金融公庫も「新型コロナウイルスに関する相談窓口」を全国の支店に設置し、休日の電話対応なども検討中。さらに過去にBSEやSARS、鳥インフルエンザ関連でも発動した、「衛生環境激変対策特別貸付」も行われることに。中小機構も経営相談窓口を設置したが、感染拡大防止の観点から電話やメールを中心に対応していくという。

 公的機関だけではない。不特定多数からインターネット経由で資金を集めるクラウドファンディングの「キャンプファイヤー」は損失が省営できる書類を提出すれば、通常のサービス利用料12%が免除され、決済手数料の5%のみで資金を集めることができる。

●デリバリー業態への進出

 資金は単なる運転資金だけでなく、新たな事業展開に活用する道もある。特に街に人が出ないいま、活況を呈しているのがデリバリーサービスだ。街に出なければ飲食店には来られない。ならばこちらから届けに行く。客席のない「ゴーストレストラン」というデリバリーに特化したレストランも増えていている。

 近年では、外部のデリバリー業者も充実の一途で、「出前館」「Uber Eats(ウーバーイーツ)」「楽天デリバリー」「ファインダイン」「LINEデリマ」などのデリバリー専門サービスが目白押し。デリバリーに向いたメニューなどは各デリバリー業者も相談に乗ってくれる。店舗での営業許可があれば、デリバリー業態への進出も基本的には問題ない。

 リモートワークなどで、デリバリー需要が激増しているいま、デリバリー用のメニュー開発に力を注ぐのもムダにはならないはずだ。

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト