投手と打者の“1対1の勝負”に割って入る「盗塁」は、野球をより複雑で面白くするルールのひとつだ。バッテリーと走者の駆け引きが、ビッグゲームの勝敗を左右したことは何度もある。
ところがいま、少年野球で「盗塁禁止」の議論が巻き起こっている。
発端は、今年1月に全日本軟式野球連盟の宗像豊巳専務理事が発表した「野球肘障害を減らすため、さらなるルールの改定(案)」である。この改革案では「盗塁数規制」について触れられ、「1試合に盗塁は3~5回まで、パスボールでの進塁なし」と提案されている。
規制の理由は、捕手の肘や肩を守るためとされている。スポーツジャーナリストの広尾晃氏が解説する。
「盗塁を刺すには、捕手は小さい動作で腕だけで送球する必要があり、まだ十分に肩や肘のできていない小学生だと怪我をすることが多い。少年野球でも投手に次いで捕手のスポーツ障害が問題になっているのです」
盗塁によって“ゲームが壊されている”という指摘もある。
「小学生の試合では、弱いチームの捕手はボールを受けるのが精いっぱいで走者を刺せない。だから、一部の強豪チームは、塁に出ては盗塁を繰り返して得点を稼ぐのが常套手段になっている。大人の指導者が、勝つためにそうした指導をしているのです」(前出・広尾氏)
そうした指導が、選手育成を妨げているという考え方が広まっている。