「ヒロインの性的魅力を発掘することは、ヒーローに託された仕事であり、またヒーローにとっての「役得」なのだ」
一九六〇年代では、ヒロインは「職業婦人」で、ほぼ「看護師」であった。日本の官能ノベルでの「ナース」とは違い、彼女たちは正義感があって、気が強い。そのヒロインが精神的な勝利と世俗的な勝利を独り占めしていくのだ。
時代による性的コードの変遷、女性たちの「読書伝統」、フェミニズムとの対決から相思相愛へなど、話題は次から次へと現われる。入口は狭いが、文学史、小説商品史、書物文化史、恋愛社会学と、どの方面からも「アメリカ」という身体を眺められる拡がりがある。
※週刊ポスト2020年3月20日号