国内

マスク転売ヤーの告白 親戚、老人、死人のアカウントまで駆使

薬局で品切れのマスク売り場(時事通信フォト)

薬局で品切れのマスク売り場(時事通信フォト)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、日常生活に大きな影響が出ている。店頭からマスクと消毒液が消え、続けてトイレットペーパーやティッシュペーパーが消え、ネットオークションやフリマアプリに大量に出品される現象が起きた。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けたのは、『ルポ 京アニを燃やした男』著者の日野百草氏。今回は、マスク転売で儲かったという47歳の男性についてレポートする。

 * * *
「上がりは100万円、俺はぜんぜん少ないほうだよ」

 おしゃれなカフェにひときわ目立つ巨体を揺すらせ、金田真一さん(仮名、47歳)は笑った。声が大きく威圧感がある。昔の出版関係、とくに中小の娯楽系や編プロにはこういう怖い人がいた。金田さんも元はそっち系の編集者だ。

 2020年2月27日、私は汐留駅とデッキで直結したカフェで金田さんと会った。同席したのは今回の紹介者で金田さんの編プロ時代の元同僚、私の出版社時代の後輩にあたる男だ。「転売で儲けてる元編集がいるんで紹介しますよ」と言われ、指定の場所は汐留だった。転売ヤーなど今更感があったが、コロナ騒動のさなか、品不足となったマスクも売っているというので会うことに決めた。当時はまだ、マスクの転売は法律違反ではなかった。

「でも元の単価を考えたらマスクは儲かった。こんなに儲かるとは思わなかったけど、何倍にしたって売れるんだから俺もびっくりだよ」

 金田さんは終始ご機嫌だった。食事に高いプレートセットを頼み、羽振りもよさそうだ。太い指にはめたシルバーリングも高いだろう。ダウンジャケットも高級ブランドだ。ボサボサの髪や無精髭、無頓着なためか清潔感は薄いが、金回りのよさは随所に見られる。

「まあこれだけの騒動だから、特需みたいなもんだ」

 私は金田さんの言葉にうなずいた。なぜなら、午後2時だというのに人がほとんどいない。ここは汐留駅前である。オフィス街であるこの界隈は、取材日だった平日は、デッキはもちろん連絡橋も含め、普段なら人でごった返しているはずなのに深夜のように人影はまばら、カフェと反対側にそびえる電通は社員5000人を在宅勤務とした。他の高層ビルに入る会社も同様なのだろう。いつもは朝日新聞社の見える築地方面からたくさんのサラリーマンや観光客がいるはずなのに、まるでゴーストタウンだ。新大橋通りや晴海通りに連なっていた観光バスも見当たらない。

関連記事

トピックス

「夢みる光源氏」展を鑑賞される愛子さま
【9割賛成の調査結果も】女性天皇についての議論は膠着状態 結婚に関して身動きが取れない愛子さまが卒論に選んだ「生涯未婚の内親王」
女性セブン
勝負強さは健在のDeNA筒香嘉智(時事通信フォト)
DeNA筒香嘉智、日本復帰で即大活躍のウラにチームメイトの“粋な計らい” 主砲・牧秀悟が音頭を取った「チャラい歓迎」
週刊ポスト
『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
撮影前には清掃員に“弟子入り”。終了後には太鼓判を押されたという(時事通信フォト)
《役所広司主演『PERFECT DAYS』でも注目》渋谷区が開催する「公衆トイレツアー」が人気、“おもてなし文化の象徴”と見立て企画が始まる
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン