65歳の2~4割、75歳以上で約半数が悩まされる「難聴」。服薬や手術などで原因を取り除ければ、聴力は回復するケースもあるが、重要なのは難聴の進行を防ぐことだ。
『あぶない! 聞こえの悪さがボケの始まり』の著者で、川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が解説する。
「難聴は聴力のレベル(程度)によって、『軽度難聴』『中等度難聴』『高度難聴』『重度難聴』の4つがあります。大雑把にいうと、50代で軽度難聴、60代で中等度、70代以降は高度や難度になる人が多い。
老人性難聴は放っておくと徐々に進行していくので、決して放置してはいけません。中等度難聴になると、相手が何を話しているか判断するのが難しくなる。最も有効な対策は補聴器をつけることです」
難聴・補聴器に関する国内の大規模調査レポート「ジャパン・トラック2018」によると、日本では補聴器をつける必要がある人のうち、実際につけている人は約14%と先進国の中で装着率が一番低い。
「難聴は認知症になるリスクを引き上げるので、煩わしい、格好が悪いなどと思わずに、軽・中等度の難聴と診断されたら、補聴器をつけることを考えるべきです」(同前)
生活習慣の見直しも予防に役立つという。老人性難聴は、ミトコンドリア内の「Bak遺伝子」が関与していることが研究で分かってきている。
この遺伝子は、体内に活性酸素が増えると活発に動き出す。活性酸素は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどを撃退するよい作用も持っているが、一方で大量に生成されると正常な細胞を酸化させ、老化させてしまう。その発生を抑えることが、老人性難聴の予防につながるのだ。坂田医師はこうアドバイスする。