世界的な新型コロナウイルスの感染拡大のなか、日本政府の感染対策は後手に回っている状況だ。乗員乗客約3700名を乗せて横浜港に停泊し続けたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に対する一連の措置についても、問題山積みだった。
香港でクルーズ船を降りた男性客の感染が発覚したのは2月1日。その後、クルーズ船は日本政府の検疫下に置かれた。
2月5日、感染拡大を防ぐため乗客全員が“隔離措置”である客室待機となり、ウイルスの潜伏期間である14日後の2月19日にウイルス検査で陰性が出た乗客の下船が始まった。
問題は、下船した乗客をそのまま自宅に帰宅させたことだ。下船者から次々に感染が確認された。つまり、隔離措置は失敗しており、船内は流行状態だったわけだ。
実際、アメリカや韓国などは下船時を起点として、そこから14日間の隔離を求めた。船内の隔離が失敗していた以上、当然の措置なのだが、なぜか日本だけは平然と家に帰してしまった。
厚労省は、あくまで船内で隔離が始まった2月5日を起点とすることにこだわり、2週間後の2月19日に乗客を“自由放免”としたのだ。
その決断について、ある政府関係者はこう指摘する。
「シンプルな問題で、法律論なんです。14日間の健康観察の期間を終え、検査で陰性だった乗客は“感染していない安全な人”となります。そうである以上、乗客をどこか別の場所に隔離する法的な根拠はなく、束縛を解いて自由にするしかありません。
船内の感染者がどんどん増えるので、“隔離”が失敗していたことには誰もが気づいていても、それを認めたら誰かが責任を取らなきゃいけなくなる。政治家も厚労省も、誰も責任を取りたくないから、失敗は認めない。つまり、『隔離は成功した』というフィクションを押し通して、感染者を市中に出したわけです」
◆日本は“マニュアル国家”