“究極の自由業”であるヤクザはカネの匂いに人一倍敏感だ。新型コロナウイルスの感染が拡大し、「カネで安全が買えるなら安いもの」と考える人が増える状況は、暴排条例によるシノギの減少に苦しむ暴力団にとって、絶好のビジネスチャンスのはずだ。彼らはどう動いたのか。それを追うことで、“ヤクザの現在地”が見えてくる。フリーライター・鈴木智彦氏が“ヤクザとコロナ”についてレポートする。
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暴力団にとって中国発の新型コロナウイルス騒動は対岸の火事だった。昨年12月に新型ウイルスの存在が確認されると目端の利く末端組員はすぐにマスクを買い占めたが、商品を中国に送って換金するパイプがなかった。
世界中に感染が拡大した今回の騒動を通じて明らかになったことのひとつは、日本のヤクザが“国際ビジネス”に疎いという実情だった。
もちろん、沖縄の暴力団の一部をはじめ、香港やマカオの中国系マフィア組織と交流を持っているキーマンは各組織にいる。が、揉め事の仲裁ぐらいで、民間レベルで中国との貿易がライフラインの一部になっている現状と比較すれば、裏社会の連携はほとんど進んでない。日本の“YAKUZA”は世界的なネームバリューを持ちながら海外進出に消極的でガラパゴス化している。
「日本人のコミュニティで、日本人を恫喝するならともかく、ヤクザの名前は海外でほぼ通用しない。語学に堪能な人間は、もはや暴力団のような旧態依然の組織に魅力を感じない。半グレのように曖昧な形で自立し、必要がある時だけ暴力団の看板を使う」(中国人によるエステ店を営業する元暴力団の経営者)
◆姐さんからの対策です