芸能

立川志の輔 おめでたい噺『八五郎出世』を独自の演出とリアルな描写

師匠が嫌った演目に挑戦した(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、師匠の立川談志が嫌った『八五郎出世』を独自な演出とリアルな描写で見せる立川志の輔のパルコ公演ついてお届けする。

 * * *
 渋谷パルコ劇場の新装オープンを記念して「志の輔らくご~PARCO劇場こけら落とし~」が1月24日から2月20日まで行なわれた(全20公演)。事前告知では『メルシーひな祭り』(フランス特使夫人と幼い娘が地方の商店街を訪れる人情喜劇)と「こけら落とし噺」の2席とされていたが、蓋を開けると「こけら落としの一席」の『ぞろぞろ』と『メルシーひな祭り』の他に「おめでたい一席」として『八五郎出世』も演じられた。

 冒頭ではこけら落としの儀式として猿楽師に扮した志の輔が劇場の神様に捧げる三番叟を舞う趣向。『ぞろぞろ』は「神事」に相応しい噺として選ばれたのだろう。

 商売繁盛を神に願った荒物屋に奇跡が起こり、真似した床屋が失敗する『ぞろぞろ』。立川談志はこれを「神様を登場させる」という斬新な演出で作り変え、「俗っぽい神様」の面白さで売り物にした。荒物屋を「父と信心深い娘」の二人暮らしという設定にしたのも談志オリジナルで、娘の描写がなんとも可愛かったのを思い出す。志の輔も「神様が登場する」枠組みは師匠に準じているが、神様にはそれほど俗っぽさはなく、また荒物屋を従来の老夫婦に戻している。確かにこの演り方のほうが志の輔には似つかわしい。

 当初の予定になかった3席目として『八五郎出世』を入れたのは、志の輔自身があらゆる古典落語の中で最も気に入っているこの噺を、自分にとって最も重要な舞台であるパルコ公演で今まで一度も演じてこなかったことに気づき、まるでこの記念すべきこけら落としのために取っておいたような気がしたからだという。

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン