2020年2月の1か月間で、300隻以上のベトナム漁船とみられる船舶が、南シナ海の中国の排他的経済水域(EEZ)に出没し違法な操業をしたり、中国の領海に侵入するなどしていたことが分かった。北京大学付属南シナ海戦略調査研究所が発行する報告書が明らかにしたもので、同研究所では一部のベトナム船は漁船を装ったスパイ船で、中国の海軍基地などの軍事情報を収集していたのではないかと推測している。
報告書によると、2月に中国海域に入ったベトナム船は全部で311隻。そのうち、海南島南東部の中国のEEZに入ったのは212隻で、残りの99隻がトンキン湾の中国海域に入ったという。
さらに、中国海域の12カイリの中国領海に侵入したのは73隻で、ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区沖に停泊。中国人民武装警察部隊直属の中国海警局の船舶が警告を発して、領海外に移動させたという。
これについて、報告書はベトナムの船舶の一部が中国の軍事基地と軍艦を偵察していたことに触れて、軍事目的でのスパイ行為と指摘している。その証拠として、通常のベトナム漁船は遭難や他船との衝突を避けるための指導識別装置を搭載しているが、今回の船の中にはこれらの装置を設置していない船舶も多かったほか、また一部の船は中国船のID番号を用いるなど明らかに偽装していたことを挙げている。
在シンガポールのベトナム問題の専門家で、ル・ホン・ヒエプ東南アジア研究所研究員は香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』の取材に対して、「この報告書は、船舶が漁業以外の任務のために中国の海域に入った可能性があることを証明する十分な証拠を欠いている」と述べたうえで、次のように指摘している。