新型コロナウイルス問題をめぐり、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格と見なされてきた保守派論客が「政権批判」に回ったことが世間を驚かせた。作家・百田尚樹氏は2月21日、ツイッターでこう呟いた。
〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉
なぜ百田氏は、これまでの“称揚”から一転、厳しい批判を繰り広げたのか──雑誌「ニューズウィーク日本版」で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、その真意を質した。
◆総理から電話があった
──ツイッターで安倍首相に批判的な投稿を始めたのはなぜですか。
百田:隣国で未知のウイルスが現われ、大量の感染者が出て、一千万都市が封鎖されている。そんな前代未聞のことが起こったにもかかわらず、入国制限の措置も取らない政府を批判するのは当然です。
──しかしその後の2月28日には、安倍首相と百田さん、ジャーナリストで『日本国紀』の編集者を務めた有本香さんと3人で会食した。どういう経緯で実現したのでしょうか。
百田:記憶を辿って話しますが、その前の週に安倍さんから携帯に電話がかかってきました。特に用事はなかったようで、私から「日本が一大事ですが頑張ってください」と雑談して、最後に総理から「では今度食事でも」という話になりました。
私は社交辞令だと思っていました。その後、有本香さんと電話で「総理から電話があった」と話したら、有本さんから「用件は何やったん?」と聞かれた。特に用件はなかったと言うと、有本さんは「用件がないのに電話するのはおかしい」という。「そういえば、今度食事でも、という話をしていたなぁ」と言ったら、有本さんが総理にメールを送ったんです。そしたら急遽、「28日夜に食事を」ということになったのです。