新型コロナウイルス問題をめぐり、これまで安倍晋三首相の“応援団”の代表格と見なされてきた保守派論客が「政権批判」に回ったことが世間を驚かせた。作家・百田尚樹氏は2月21日、ツイッターでこう呟いた。
〈安倍総理はこれまでいいこともたくさんやってきた。/しかし、新型肺炎の対応で、それらの功績はすべて吹き飛んだ〉
なぜ百田氏は、一転、厳しい批判を繰り広げたのか。雑誌『ニューズウィーク日本版』で特集「百田尚樹現象」(2019年6月4日号)を執筆したノンフィクションライターの石戸諭氏が、その真意を質した。
──百田さんは中国や韓国に対して日常的に激しい言葉で批判している。嫌韓、嫌中色が強く、時に「ヘイトスピーチ」的だとまで言われています。この延長で入国制限せよと言っているのではないですか。
百田:それはまったく違いますね。感染症対策はあくまで有事です。中国からの入国制限だって、世界中の国がやっています。私の主張はそれと変わりません。そもそも私はヘイトスピーチはしていません。「サヨク」の悪質なイメージ操作です。
私は単なる一市民として、自分の感じることはツイッターとか、いろんなところで、一切枷をはめずに言うていく。それだけの話です。
──結果的に、日本政府は3月9日から中国・韓国からの入国制限を実施した。自分の言った通りになった、と思いますか。
百田:私が言った通りになったからといって、それは自分の影響だなんて思いませんよ。前から総理が考えていたことでもあるでしょうし。
一つ言えるのは、総理と2月28日に会食した後、私と有本香さん(ジャーナリスト)は帰りのタクシーで「もしかしたら、習近平の来日はなくなるかもしれんなぁ」という会話はしました。そういうニュアンスを感じたということです。