父が急死したことで認知症を患う母(85才)を支える立場となった『女性セブン』のN記者(56才)が、介護の裏側を明かす。
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高齢者が新型コロナウイルスの脅威をかわすには、不用意に外に出ないのが、いまのところいちばん確かな方法だ。しかし、“外出こそ最高の認知症対策”をモットーにする母が、ずっと楽しみに待っていた観劇予定をどうするか。難しい選択を迫られた。
◆つねに「これが最後かも」 “今日を生きる”母の外出
今年の年明けに、母が以前絶賛していた劇団の公演告知を見つけ、即チケットを取った。その劇団の公演は昨年も見に行ったのだが、上演後、俳優たちが舞台に出て来て芝居への熱い思いを語ると、母は前のめりになって大拍手。
「あの人たちは芝居が好きなのね、若いっていいわねー」と感動していた。「母は本当に認知症なのだろうか」と疑うほどの驚きとともに、“これが母の脳を刺激するツボだ!”とコツを得た気がして、ずっと次の公演を狙っていた。
母はもちろん大喜び。前回の舞台や、挨拶に感激したことはまったく覚えていないが、久々の外出がうれしいようだ。
チケットを取った日、世間では新型コロナウイルスで日本初の感染者確認(1月16日)のニュースが飛び交っていた。でも私には対岸の火事。この後、大混乱になることなど想像もしていなかった。
そもそも母は丈夫なのだ。かぜくらいは医者に行かずに治すし、高齢になってから毎年インフルエンザの予防接種は受けるが特に警戒もしない。
「バカはかぜひかないのよ」と言うのが、母が認知症になってからの定番ギャグ。だから人より多少強気で“楽しいお出かけ”を優先させている。
それに母も85才。元気そうだが、母を誘うお出かけには、いつも「これが最後かも」という思いがつきまとう。
しかし、1月末にWHO(世界保健機関)が緊急事態宣言、2月1日には日本政府が新型コロナウイルスを指定感染症、検疫感染症に指定する政令を施行。観劇は3月1日に迫っていた。